第一章  暴走 

part1

 ジュンセがまだ謳泉学園を知る前。

 死の意味を深く知らなかった頃。

 ジュンセには、中の深い友人が二人いた。

 やんちゃな振る舞いばかりしていた少年、トウヤ。

 トウヤの横行に張り合ってきた勝気な少女、ミサト。

 よく暴走する二人を宥めるのが、ジュンセの日常となり、そんな時間を過ごしていくうちに、三人は熱い友情を結んでいった。

 学年が上がるにつれ、トウヤとミサトは、その活発さを落ち着かせていった。

 けれど固く繋がった関係は続き、何かする時は三人でいるのが基本だった。

 それがいつまでも続くと、三人は疑わなかった。

 中学2年になったばかりのある日、ミサトの提案で、三人はキャンプへ行く事になった。

 ミサトの父親に送ってもらい、そこで遊ぶ。それだけの話だった。

 キャンプ場へ車で向かう。車内では少年少女が年相応に騒いだ。

 目的地へと続く山の中の道路で、車は道を外した。

 傾斜けいしゃを激しく転がり落ち、車体が木々や岩に殴りつけられ、中の人間が衝撃に痛め付けられる。

 奇跡だった。ジュンセは小さい骨折と数カ所の打撲で済んだ。

 混乱するまま、一度車から脱出すると、残るトウヤとミサトを助け出そうと振り返る。

 ジュンセの目に、血まみれになって首や腕が捻じ曲がった友の姿が焼き付いた。

 思考が追い付かず、ジュンセはただ、二人の名を呼んだ。

 絞り出すように、喉を震わせた。

 ジュンセが死の意味を理解する、そのキッカケが訪れる。

 冷たい静寂せいじゃくが、ジュンセの絶叫によって引き裂かれた。

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