白の傭兵団

@shallwe

0章

プロローグ

「この『千年たっても、君を忘れない。』はなかなかに傑作だった」

「しろそめ れお」と幼さが残った字で書かれたルームプレート。

 朝日が差し込むその部屋で少年―――おそらく中学生だろう―――が文庫本を片手に呟いたその時。


「何の用?校舎裏まで呼び出すなんて」

「霧弥くんっ、好きです!付き合ってくださいっ!」

 とある高校の校舎裏、一人の少年が顔を真っ赤にした一人の少女に告白されたその時。


「******?ご飯よー?降りてきなさーい」

 今はもう忘れてしまった自分の名前が、母だったに呼ばれた時。



世界が一変した。









建造物は全てが不可視の力によって潰された。何故か人は生き残った。

海水面が急上昇し、地球の土地の3分の1が海の底に沈んだ。人は濁流に押し流されて陸地に戻された。


世界中の誰もが思った。

『命だけは助けてくれるようだ…』




絶望は終わらない。

手に剣を持った天使が子供の前で親の腕を切り落とした。

手に槍を持った天使が親の前で子供の腹を串刺しにした。

手に盾を持った天使が老人を押し潰した。

その死体カラダはそれぞれの家族のもとへ迅速に届けられた…、矢を弓につがえ、こちらを狙う天使によって。


後から聞いた話によると、黒い絶望の中にあった世界中の人間に、「全能」を名乗った「」から「神託」が届いたそうだ。


『愚かなアダムの末裔よ。貴様らの様な矮小な物が、存在をいつまでも許されると思うな。潮時だ。この世界の物には天使が神罰を下し、新たな世界が創られる。』

そこには、一切の慈悲はない。




この状況に怒りを覚える者などいくらでもいた。

『何が神罰だ。神を気取りやがって』


「このオレからラブコメを奪うだと?やれるものならやってみろ」

部屋の小説を守り、槍で両足を本棚に固定された少年が激怒した。



この状況に悲しみを覚える者などいくらでもいた。

『僕たちが何をしたというんだ…』


「告白の返事聞くまで死にたくないよぉ…」

好きな少年の目の前で背後から天使に刺され、少女が悲しんだ。



この状況に悔しさを覚える者などいくらでもいた。

『なぜ、私達にはこんな天使悪魔を殺す力がないんだっ!』


「力が、ちか、らが、あれ、ばぁ……」

父の遺体を持ってきた天使を殺さんと殴り掛かり、心臓を抉られた******が悔しがった。
























夜の帳が下りたころ、絶望に満ちた都市の遥か上、この状況に喜びを覚える者がいたことも忘れてはならない。

「やっと******のおy、いや薄汚いヒトでなくなる。神の元へ戻れる!」

天使******の母だったモノが狂気ほとばしる顔で笑った。

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