第22話 始まった
そしてアリスが13歳を迎えた。
「本当に起きるでしょうか…」
自分が言い出したことであるが、いざとなると過去世は事実だったのか、これから未曽有の災害が本当にこの国を襲うのだろうか心配が募る。
アリスとイリーク、そしてシルヴェストル公爵家は思いつく限りの手は打った。
アリスの妄想と切り捨てず、耳を傾け、信じ、それぞれの持つ力を惜しみなくアリスのために使ってくれたのだ。これだけしてくれる家族が1年後に豹変するとも思えなかった。しかし、もし前回と同じく家族が手の平を返す事があったとしても今までしてくれたこと思えばもういい、あきらめがつくとアリスは思った。
スワン領で大規模な地震が起こったと報告があった。
王宮に勤め、国王に近い部署で働くエルネストには情報が早く入ってくる。
建物倒壊、人的被害など続々と情報が追加されていく。
「・・・はじまったか」
エルネストはつぶやいた。
アリスが記憶にある範囲で災害の起こる場所をリスト化しておいた。
だが今回のスワン領はそのリストには入っていない。
前回は、一魔術師として命令に従い各地をまわっていただけなのだ、全貌はわからない。そのすきを縫うように災害は起こっていった。
「師匠、魔術宮への命令はどうなっていますか。みんな大丈夫ですか?」
現場に派遣されているイリークは転移により、情報交換のために時々戻ってきていた。
こんなことができるのもアリスと魔力を極限までに高めておいたからであり、今のイリークには造作もないことだった。
「ああ、大丈夫だ。今は瓦礫を移動するのが主で兵士が主体になっている。治癒魔法を使える魔術師が派遣されているが特に問題ない。まだエレンとかいう聖女も現れていないようだよ」
『難しい話は後々。せっかくお菓子用意したんだから食べようよ』
空気の読めないケルンがいそいそとテーブルの上をやってくる。
「用意してくれたのはルイスでしょ」
いいながら、疲れているイリークのためにお茶を入れる。
「仕掛け、うまくいってると良いなあ」
「ああ。」
「仕掛けられなかったところには申し訳ないけど・・・」
「我々・・・いや、アリスは十分以上のことをしている。逃げだすこともできたのに自分を犠牲にして過去をかえようとしてくれてるんだよ。その分、災害が起こったところに十分な支援ができるんだ。決して君が気に病むことじゃない」
アリスが記憶する被災地には仕掛けをしておいた。
土地にかけられた呪いが発動しないように魔方陣を封じる仕掛けと、万が一、以前と同じように魔術宮が疑われ、イリークをはじめ魔術師たちに冤罪がかけられたときのためのしかけ。
「私も現場に行きたい。」
「駄目だよ、比類なき魔力と魔術を持つ君があらわれたら大事になる。王家に目を付けられ魔術宮に引き込まれるよ。前の二の前に…いや、すまない。」
「ううん、大丈夫。でもせっかくケルンのおかげで治癒魔法が使えるから力になりたいと思ったの。」
『いいんじゃない~。僕もついていく、あ、お菓子はたくさん持ってね。ルイスに言っといて』
ケルンの後押しを受け、アリスは現場に出ることになった。
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