第19話 加護と契約

 聖獣も紅茶とお菓子を用意してもらい、いつの間にか3人でのお茶会となった。

 先ほどの優美な姿では食べにくいからと、スズメほどの大きさに変化し、カップのふちにとまり器用にお茶を楽しんでいる。

 すでに日が暮れ、空には満天の星が輝いている。

 優秀な魔術師二人と聖獣がいれば、怖いものなどない。

 持ってきていた魔道具で柔らかな光を作り、昼とは違った雰囲気のサロンとなっていた。


 暗くなる前に屋敷に戻りたかったが、今後のことを相談する必要がある。聖獣をどのようにお迎えするのかなど相談することが山のようにあり、先に馬車だけ先に帰らせたのだった。

「で、もう一回聞きますけど!師匠は羽で、なんで私だけ流血事件なんですか!」

『いやだからね。加護を与えるのと契約するのとは違うわけで・・・』

「私も加護でよかったです。何なら何もいただかなくてもよかったです。」

『ひどすぎる。聖獣だよ?加護だよ?契約だよ?』

「そもそもなんですか、それ。無理に押し付けられて・・・それもらったからって意味わからないんですけど!」

『うわっ、こわっ。何この人。この人怖いんですけど!』

 聖獣は小さい体でプルプル震える。


「聖獣様、アリスが失礼いたしました。ですが私も身に余るこの度の光栄に恐れ多い気持ちでございます。聖獣様の崇高なるご配慮についてお話しいただけないでしょうか。」

『うんうん、これよこれ。それに比べて弟子は・・・全く』

 聖獣はぶつぶついいながら頭を振った。

 イリークは聖獣の俗っぽさに実はあきれているとは欠片も表には出さなかっただけなのだが。


 契約とは双方向のもの。対して加護とは一方通行のもの。聖獣はそう説明した。

加護は聖獣が気に入ったものに対して与えるもので、運を引き寄せたり、星のめぐりあわせが良くなったりする。何か身体に危機が迫った時に免れることもできる。

 契約は主従を結ぶものではなく、血の契約により守護するかわりに、その魔力をいただき聖獣の力も強くなる。そのため生活を共にすることとなる、お互いに利益のあることなのだ。


『ぐうっつ!』

 したり顔で説明し終わったところで、アリスの魔法による攻撃が聖獣を襲った。

「魔力をうばう?!そんな大事なこと言わず、勝手に契約するな!!」

 来る日に備えて、命を懸けて高めてきた魔力を奪うとはなんてことを!とアリスは反射的に攻撃してしまった。

『待て待て。いや、ちょっと気が短いなあ、もう。』

 さすが、聖獣。これくらいではケガはない。


 もう一度アリスがさっと手を挙げると

『うわあ、ごめんなさい。ち、違うのよ。魔力はもらうけど、僕を通してまた君に戻るの。そうすることで君に聖なる光の魔力が宿るの。僕はお気に入りの君の魔力を体に通すことで僕の魔力が育って強くなるってわけ。』

「・・・じゃあ私は弱らない?」

『弱らない!僕と契約したんだから強くなるに決まってるじゃない。もう、感謝されても攻撃されるなんて思ってもなかったよ。』


 聖獣の能力はいまだよくわからないものの、悪いものではなさそうだ。

 イリークと相談し、屋敷に連れ帰ることにした。

 精神的に疲れ切った3人は転移で屋敷に戻った。


 聖獣は、スズメサイズのままで過ごすことになった。執事に、籠に入れられそうになったが、逃げまくり放し飼いを勝ち取った。

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