第47話 おっぱいドラゴン

 ママドラゴンは、現れた直後から無双していた。


 無双と云っても、ちぎっては投げちぎっては投げの大立ち回りをしたわけではない。なんて言えばいいのだろう? 強いて言うのなら、神様の威光無双だろうか?


 ママドラゴンが現れた途端に、皆が平伏した。その後、突然呼び出された王様まで平伏する始末だ。ママドラゴンはとても偉いらしい。


 それもそのはず。話を聞いていると、ママドラゴンは、どうやら神様と信仰されているらしい。それも、一部のカルト的な信仰ではなく、人間たちの間で広く信仰されているようだ。僕のママすごすぎ…!


 土と水を隔て、大地と海を創り上げた“地母神カイヤ”それがママドラゴンだ。ちなみに、パパドラゴンは、空を創った“天空神ウラヌス”と呼ばれている。僕は、神と崇められているドラゴンの、神龍の子どもだったのだ。僕自身はなにかしたわけじゃないけど、2柱の神の子どもというだけで、僕まで崇められちゃってる。元が小市民魂の僕には、逆に恐縮しちゃう状況だ。

 しかもこのママドラゴン、神様だからか、感覚がぶっ飛んでる。


 僕が「この離宮を離れたくない」とママドラゴンに訴えたら、ママドラゴンが、離宮どころか国ごと僕にプレゼントしてくれた。国ってそんな簡単にポンポンあげたり貰ったりするようなものじゃないと思うんだけど……王様の顔引き攣ってたよ。たぶん、僕の顔も引き攣っていただろう。


 そんな訳で、この国は僕のものになっちゃったんだけど……僕に国の運営なんてできるわけない。必死に“無理だよ”と、首を振ってママドラゴンに訴えたら、王様が国の運営を任されてた。元の鞘に収まったわけだ。これでめでたし、めでたしかと思ったら、今度は王様から衝撃の事実が伝えられる。なんとこの国、侵略戦争を仕掛けられているらしい。しかも、敗戦色濃厚なのだそうだ……。


 そのことを聞いたママドラゴンは、ものすごい力技、パワープレイに出た。


 なんと、侵略戦争を仕掛けてきている国の王様を魔法で召喚、拉致すると、戦争を止めるように命令したのだ。


 突然、拉致された王様は酷く驚いていたな……。いきなり見知らぬ場所に拉致されて、神様に戦争を止めるように命令されて、そのまま現地解散。むしろ、パニックになって取り乱さなかっただけ褒められるべきだと思う。個人的には、王様がちゃんと国に帰れるか心配なところだ。


「ようやく問題が片付きましたね」


 そう言うママドラゴン。片付けたと表現するより、問題を力でぶっ飛ばした感じだけど……これでよかったのかな?


「やっとルーとゆっくり話せますね」


 そう言って笑うママドラゴンは、とても美しく、魅力的で、思わず心臓が高鳴った。


 マジか……相手はママドラゴン、実の母親だというのに、僕はドキドキしていた。前世の記憶があるからか、あまり母親とは認識してなかったし、ドラゴン姿ならカッコイイとしか思わなかったけど、今はとても美しい人間の少女の姿をしている。僕の感覚的には、初めましての美少女といった感じなのだ。


 輝く銀の長い髪に、青に透き通った大きな瞳、スッと通った鼻筋に、優美な顎のライン。かわいいというよりも、美しい顔立ちをしている。見た目の年齢は10代後半くらいだろうか。少女から大人の女性への過渡期。少女の持つ儚さと、大人の女性の妖艶さが奇跡のバランスで同居し、存在している。


 そんな美少女に笑いかけられたら、普通ドキドキしちゃうよね。僕が特別マザコンというわけではないと思う。


「ずっと貴方のことを見守っていましたよ。魔力が扱えるようになったことも、ブレスや魔法も使えるようになったことも、空を飛べるようになったことも知っています。更には今日は念話まで……。素晴らしい成長ですよ、ルー。貴方はわたくしの誇りです」

「クァ……」


 本当にずっと見守られていたっぽい。特に、空を飛べることは隠していたのに知っているし……親だからセーフみたいなところがあるけど、ストーカーってこんな感じなのかな? ちょっと背筋がゾクッとしたよ。


「そういえば、ルー。貴方は女性の胸が好きなのですか?」

「クァッ!?」


 本当にずっと見られていたらしい……。僕がアンジェリカやメイドさんのおっぱいを触ったり舐めたりしているのも見られていたのだろう。なんだこれ恥ずかしい。実の息子の変態ぶりを見て母親は何を感じたんだろうね? ママドラゴンは、にこにこと僕を見ているけど……なんだかその笑顔も怖く思えてきたよ……。


「クー…」


 もう全部見られてたんだ。今更言い訳できる状況じゃない。僕は素直におっぱいが好きだと認めた。なんだこれ。新手の羞恥プレイか?


「そうですか……やはり、無意識に母性を求めていたのでしょうか……? なんにせよ、女性の胸が好きだということは分かりました」


 そう言うと、ママドラゴンが胸を僕の顔の前に置いた。


「触ってもいいんですよ」


 ママドラゴンが僕の頭を撫でながら甘く囁く。僕は、迷わずママドラゴンの胸に手を伸ばした。いや、ほら……触っていいって言うし、赤ちゃんが母親のおっぱいを求めるのは普通だから……。だから僕は、悪くないと思うんだよ?

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