第27話 温泉ドラゴン④
「ルー様、これからどういたしましょう?」
ケーキを食べ終わった後、クレアに尋ねられた僕は困ってしまった。どうしよう?
離宮の中はだいたい探索し終わったし、外のお庭も見終わってしまった。これ以上外となるとお城の中になってしまう。僕ってどのくらい外に出てもいいんだろう? あまりアンジェリカから離れすぎるのは良くないと思うんだけど、それがどの程度なのか分からない。
「クー……」
僕は腕を組んで考え込んでしまった。そんな僕の様子がおかしかったのか、クレアとティアがクスクスと笑う。2人に笑われるのはちょっと恥ずかしいけど、美少女2人を笑顔にできたのなら僕も本望だ。
「どうしましょうといえば、クレアはお風呂をどうするんですか? たしか今日は朝に入る日でしょう?」
ティアの言葉にクレアが困ったような表情を見せる。クレアは今日、朝風呂に入る予定だったらしい。察するに、アンジェリカのお世話に隙を作らないように、メイドさんたちで順番にお風呂に入るシフトが組まれているんだと思う。
「そうですけど、ルー様のお世話もありますし……」
本来なら、アンジェリカが勉強中のこの時間は、クレアにとってお風呂に入る休憩時間だったはずだ。でも、アンジェリカに僕の世話を任されてしまった。
「クークー!」
僕は手を上げて鳴き声を上げる。
「ルー様?」
「どこか行きたい所がお決まりになりましたか?」
「クー!」
僕は2人に力強く頷いて見せた。
◇
「あの、本当にここでよろしいですか?」
「クー!」
僕は“そうだよ”と頷く。
僕たちがやって来たのは、温泉だ。いや、正確には温泉に続く脱衣所への扉の前だ。クレアが僕のお世話でお風呂に入れないなら、僕がお風呂に入ればいいじゃないという逆転の発想である。
しかも、今お風呂に入ると、もれなくクレアとティアと一緒にお風呂に入れるのである。美少女2人と一緒にお風呂に入れるチャンスを逃すわけにはいかない。ふへへ、人間だったら間違いなく逮捕されていたな。ドラゴンでよかった。
クレアが開けてくれたドアの先では、メイドさんたちが服を脱ぎ脱ぎしていたり、すでに裸のメイドさんたちも居る。このメイドさんたちも今からお風呂かな?
「クレア、遅かったですね。あら?」
「大きなトカゲ? いえ、翼がありますね」
「もしや、あの方が姫様が召喚なさったドラゴンでは?」
メイドさんたちの中には、初めて僕を見た者も居るようだ。
「クー」
僕は“ドラゴンだよー”と翼を広げてドラゴンアピールする。
「まあ。想像していたより小さくてかわいらしいですね」
「綺麗……まるで精巧な銀細工のようですね」
「でも、なぜルー様がこのような所に?」
かわいいとか綺麗とか、僕ってわりと好評なのではないだろうか? たしかに、今の僕はかっこいいし、かわいい無敵の赤ちゃんドラゴンだし、当然かな。それにしても……。
僕を見ているメイドさんたちの中には、湯上りなのか、肌をピンクに染めた裸のメイドさんたちも居る。大きなおっぱいから小さなおっぱいまで丸見えだ。隠そうともしていない。眼福眼福。できれば恥じらい成分も欲しいところだけど、相手が人間ならともかく、相手がドラゴンでは、見られても恥ずかしくないのだろう。そこがちょっと残念だ。
「ルー様は温泉をご所望です」
クレアの言葉に、僕は頷く。
「ドラゴンがお風呂……?」
「昨日、姫様と一緒に入浴なされたとは聞いていましたが……」
「もしや、温泉をお気に召したのでは?」
「クー!」
僕はメイドさんの言葉に“そうだよ”と頷く。実際、温泉は好きだ。温かくて、体がぽかぽかとしてリラックスできる。しかも、今の僕は赤ちゃんドラゴン。言ってしまえば、女湯に入れてしまう子ども状態なのだ。これは入らにゃ損どころの話じゃない。なにがなんでも入るべきだ。
温泉に入るのは、僕にとってメリットしかないんだよなー。一緒に入るメイドさんたちは皆美少女だし、しかも、その美少女メイドさんが僕に裸でご奉仕までしてくれるんだ。温泉は僕にとって楽園、パラダイスである。
「私たちがルー様のお世話をしますから、早く服を脱いでしまうといいですよ」
「そうですか? ありがとうございます。ルー様もそれでよろしいですか?」
「クー」
どうやら、お風呂上りのピンクに上気した肌のメイドさんたちが、クレアとティアたちが服を脱ぐ間、僕のお世話をしてくれるらしい。
「ルー様、こちらへどうぞ」
「クー」
僕は裸のメイドさんに抱っこされて、イスへとテーブル席へと案内された。抱っこされると、僕の目の前にたゆんとおっぱいがきて、思わず凝視してしまったよ。
「ルー様、よろしければこちらをどうぞ」
イスに座ると、すぐにカップに入った飲み物が用意された。
カップの中には、血よりも濃い赤黒い液体が入っている。これは何だろう? ワインとか? でもワインをカップで出すだろうか?
匂いを嗅ぐと、芳醇な甘い香りがした。美味しそうな香りだ。酒精は感じない。ワインではなさそうだ。
僕はカップを両手で持つと、赤い液体に舌を伸ばす。甘く豊かな味わいだ。僕の知ってる果物で言えば、ブドウが近いかもしれない。そして僅かな酸味と苦味も感じる。しかし、その僅かな酸味と苦みのおかげで、甘さがより惹き立ち、後味がスッキリしたものになっている。すごく美味しいジュースだ。
「カップを両手で持ってペロペロして……」
「なんてかわいいんでしょう……」
「あんなに一生懸命舌を伸ばして……」
「かわいい……」
アンジェリカも言っていたけど、どうやら僕の飲み物を飲む姿は、かわいいらしい。メイドさんたちにも好評なようだ。
僕からしたらメイドさんたちの方がかわいいんだけどね。僕を接待してくれているメイドさんたちは4人。いずれも裸で、淡くピンクに上気した肌をしている。たぶんお風呂上がりで涼んでいたんだと思う。もう一つ特徴を挙げるとしたら、それは全員ツルツルなことだろう。この世界の人間は下の毛が生えないのか、それともこの国では剃るのが礼儀なのかもしれない。おかげで丸見えだ。
丸見えといえば、皆隠そうともしないからおっぱいも丸見えだ。おっぱいと一口に言っても、大きいのから小さいのまで、大きさや形や色、どれも違ってそれぞれ個性がある。
「クー」
ジュースは美味しいし、メイドさんたちはかわいい美少女だし、しかも裸でお世話してもらえるとか、僕は前世でいったいどんな徳を積んだんだろうね。
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