第25話 おやつドラゴン

 アンジェリカの部屋に戻ると、アンジェリカはすでに部屋に戻ってきていた。


「クー!」

「姫様、ただいま戻りました」

「ルー」


 アンジェリカは僕を見ると、花が咲くような笑みを見せる。かわいい。空間が一気に華やいだ気がする。


 アンジェリカは、席を立つと僕を抱っこしてテーブル席へと座る。僕はアンジェリカに赤ちゃんのように横抱きにされたまま至近距離で見つめ合う。


「今お菓子が来ますから、一緒に食べましょうね」

「クー」


 僕の頭を優しい手つきで撫でるアンジェリカ。でも僕は、どうしてもアンジェリカのお胸に視線が行ってしまう。だって目の前にあるんだもん。しかも、手を伸ばせば届くような近距離だ。アンジェリカのお胸はまだ慎ましいけど、ちゃんとドレスを押し上げて膨らみを主張している。


「ルー?」


 気が付いたら、僕の手はアンジェリカのお胸に伸びていた。そのままもみもみとお胸を揉む。下着やドレス越しだけど、ちゃんと柔らかい。けど、弾力もあって、ずっと触っていたくなる柔らかさだ。


 でも、いきなりお胸を揉んでしまったら、さすがのアンジェリカも怒るだろうか?


 僕は恐る恐るアンジェリカの顔を確認する。


「ルーったら、お乳が欲しいのかしら?」


 アンジェリカは僕にお胸を触られているというのに微笑んでいた。なんだか母性を感じさせる柔らかい笑みだ。でも、その笑みはすぐに困ったような表情へと変わる。


「でも、ごめんなさい。わたくしはまだお乳が出ないんです」


 なんと、変態ドラゴンにお胸を揉まれているというのに謝る始末だ。アンジェリカ、なんて良い娘。


 怒られることはないと分かった僕は、大胆な行動に打ってでる。アンジェリカのお胸を揉みながら、お胸のサクランボの位置を探し始めた。名付けて“サクランボ狩りゲーム”である。どこかな、どこかなー?


「ルー様、姫様、お待たせいたしました」


 サクランボ狩りゲームをしていると、木製のワゴンになにかを載せたメイドさんがやって来るのが見えた。


「さぁルー様、ちゃんとお席に座りましょうね」


 そして、クレアに抱っこされて、アンジェリカと離れてしまった。まだサクランボ見つけてなかったのに残念である。またの機会に持ち越しだね。


 クレアにイスに座らされると、目の前のテーブルに白いお皿が置かれた。


「こちらをどうぞ」


 これは……シフォンケーキだろうか?


 僕の目の前のお皿には、黄色い断面が美しい三角形のケーキのような物が置かれていた。シフォンケーキ、あるいは分厚いホットケーキを三角形に切った感じだ。たしかにケーキではあるけど、お姫様が食べるケーキにしては、随分と素朴な印象を受ける。


「わたくしには、クリームとチョコをお願いします」


 アンジェリカがそう言うと、メイド長であるマリアがケーキに生クリームとチョコレートのソースをトッピングする。なるほど。シフォンケーキのようにトッピングして食べるタイプのケーキのようだ。


「ルー様はどうなさいますか?」

「クー……」


 クレアが僕に訊いてくるけど、言葉が喋れない僕には答えられない。すごくもどかしい。


「こちらの生クリームはいかがでしょうか?」


 僕の葛藤を察したのか、クレアが訊き方を変えてくれる。これならYES、NOで答えられるので僕も頷いたり、首を振ったりして意思表示できる。


 トッピングは生クリーム以外にもいろいろとあった。ジャムやチョコ、フルーツをお酒で漬けた物もあった。ラムレーズンの好きな僕は、生クリームとお酒で漬けた果物を選択した。このお酒で着けた果物、ルムトプフと言うらしい。


「ルー様、あーん」

「クァー」


 朝食と同じく、クレアが“あーん”してくれる。美少女に“あーん”してもらえるなんて、本当に幸せだ。


「パクッ」


 美味しい。生クリームは、ちゃんとミルクの味がする動物性の物だし、ルムトプフは、けっこう強いお酒に漬けていたのか、強い酒精とちょっとの苦みを感じる。しかし、それだけじゃない。ルムトプフはフルーツを漬けたからか、フルーティな甘みを感じる。これ、好きな味だ。甘くてほろ苦いルムトプフを僕は一口で気に入った。


 そして、忘れてはならないのが、主役であるケーキである。ケーキ自体にも味は付いており、砂糖の甘さとバターの風味を感じる。そして、重い。シフォンケーキのような軽い物を想像していたけど、ずっしりと重いケーキだった。どちらかというと、シフォンケーキやホットケーキというよりも、パウンドケーキに近いだろう。ずっしりと重く、しかし、噛めばほろほろと崩れていく、しっとりしたケーキだ。


 ケーキの甘味とバターの風味。生クリームの濃厚なミルクの味。ルムトプフの甘くほろ苦いフルーティな酒精の味。それぞれがお互いの味を惹き立てて、口の中をいろんな味が巡り、舌を楽しませてくれる。美味しい。


「はい。ルー様、あーん」

「クァー」

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