第15話 温泉ドラゴン③
「ルー様、私はヴィオレッタと申します。ヴィオと呼んでください」
「ルー」
ヴィオレッタと名乗った白髪メイドさんは、幼かった。アンネの場合、おっぱいで隠れて顔がよく見えなかったけど、ヴィオのおっぱいはまったく無いので、その端正な顔がよく見える。白く透き通った肌に、勝気そうな紫の瞳。その輪郭は幼く、ほっぺはぷにっと柔らかそうだ。将来、美人になることが約束された美幼女。それがヴィオという少女だった。
「姫様はもう少し時間がかかるので、もう少しだけ待っていましょうね」
「クー」
僕は分かったとヴィオに頷いて見せる。
「本当に言葉分かるんだ。ルー様ってすごいですね」
「ルールー」
僕はヴィオの腕の中で胸を張ってみせる。えっへん。
「ふふっ。かわいい」
ヴィオが柔らかい笑顔を浮かべる。笑顔のヴィオはとってもかわいらしかった。僕なんかよりヴィオの方が絶対にかわいいと思う。
「失礼します」
そう言って、ヴィオはしゃがんで僕をお湯の中へと浸ける。ゆっくり焦らすように僕をお湯に浸からせたアンネとは違い、ドボンと一気に浸からせるヴィオ。でも、ちゃんと僕の首がお湯から出るように調節してくれるのはアンネと一緒だ。僕を気遣っているのが分かる。
「クー……」
やっぱりお湯に浸かるのは気持ちが良い。目を閉じて、温泉を堪能する。
「ルー様、気持ち良さそう」
ヴィオの笑いを含んだ声が聞こえる。
ヴィオの腕に抱かれてお湯の中を揺蕩うのはとても気持ちが良い。全身の力を抜いて、だらんとヴィオの腕にもたれかかる。
折り畳まれていた背中の翼がうずうずしてきた。翼を広げた方が気持ち良いかもしれない。僕は、背中に意識を集中して、翼を広げていく。
すると、僕の体はヴィオの腕を離れてぷかっとお湯に浮かび上がった。
「ルー様浮いてる!」
「クー」
自分でもビックリだ。翼を広げたことで浮力が増したのかな?僕の体は、まるで浮き輪に乗っているかのように安定してぷかぷかと浮いていた。
「ルー様、もしかして、泳げるんじゃない?」
「ルー」
浮いてるんだし、泳げるだろう。僕はそのまま背泳ぎのような格好でバタ足する。僕が足を動かす度に、ちゃぽちゃぽと小さな水飛沫が上がった。
「進んでる進んでる! 遅いけど」
「クー」
僕はそのまま体を左に反らして左に旋回する。このまま泳いでヴィオの所に帰ろうと思ったのだ。
「あれ? 曲がってる」
バタ足だけじゃなくて、尻尾も左右に振ったら、もっと速くなるかな?
「帰って来てる…? ルー様、もうちょっとですよー。がんばってくださーい」
「クー!」
視界にヴィオの姿を捉えた。立って僕を応援してるから、その幼い裸体が丸見えだ。ヴィオのおっぱいは全然ない。ちっぱいとも呼べない。本当に無乳だ。絶壁である。上半身だけ見たら、男の子と見分けがつかないだろう。しかし、その下半身は、ぷっくりとかわいい女の子のものだ。毛が無いからこちらも丸見えだ。
「ゴール!」
そして僕は、ついにヴィオの元までたどり着いたのだけど……。
「クー!?」
ヴィオのかわいいお股ばかり見ていたからだろう。僕の顔がスポッとヴィオの脚の間に入ってしまった。超至近距離からヴィオのお股を見上げてる形だ。舌を伸ばせば届いてしまうような距離にヴィオのお股がある。
ゴクリと喉が鳴るのが分かった。
舌を伸ばそうかどうしようか。でも、相手は小さい女の子だし……。そんなことを考えていたら、体をガシッと掴まれるのが分かった。
「クァ!?」
そしてそのまま、ひょいと体が持ちあげられる。その時……。
ぷにゅっと僕の顔がヴィオのお股に押し当てられる。たぶん、ヴィオの想定より僕の首が長かったのだろう。僕の顔は、そのままヴィオのお股をなぞり上げるようにして体を持ち上げられた。
「あ……」
自分のお股に僕の顔が当たったのが分かったのだろう。持ち上げられた僕は、「失敗した」と言いたげなヴィオの顔と目が合った。
「その……ルー様、ごめんなさい。嫌、だったよね…?」
「クー!」
僕は「全然大丈夫です!」と、声を上げる。
「やっぱり怒ってる…?」
「ウー」
言葉が通じないのって不便だね。僕はそう思いながら首を横に振る。
「許してくれますか…?」
「クー!」
僕は元気よく頷く。許す許す。というか、僕にとって、むしろご褒美だった。逆に僕が謝らなくてはいけないまである。
「よかったぁ……」
ヴィオが心から安堵した表情を見せると、僕を抱きかかえた。
「そろそろ姫様のお手入れも済みますから、一緒に行きましょう」
「クー」
ヴィオに抱かれたまま浴槽を出てアンジェリカの元まで移動する。ヴィオにもまるで赤ちゃんのように横抱きにされてるんだけど、こうして見ると、ヴィオのおっぱいの無さが悲しくなるほどよく分かる。本当に絶壁だ。まぁその代り、ヴィオのかわいい顔が見えるけどね。今まで見てきたメイドさんは、皆美人だったけど、ヴィオはその中でも上位の美人さんだ。
メイドさんたちって、顔で選んでるのかって思うほど皆美人さんなんだよねー。
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