第13話 温泉ドラゴン

「ルー、ここがお風呂ですよ」


 お馴染になりつつあるメイドさんたちによる人力自動ドアの向こうは、もあもあと白い湯気が漂う広いお風呂場だった。いや、お風呂場なんて表現じゃ足りないな。日本の旅館にある温泉というよりも、豪華なホテルにある大浴場といった感じだ。古代ローマにあったというテルマエを思わせるような、荘厳な石造りの大浴場だった。だって、お風呂場なのに木とか花とか植えられてるんだよ? なんだかリゾート施設に来たみたいだ。


 漂ってくる湯気の臭いは、鉱物のような匂いがした。ひょっとして、温泉が湧いているのだろうか?


「では、いきましょう」


 そう言って、僕をまるで赤ちゃんのように横に抱えたアンジェリカが大浴場へと入っていく。もあっとした熱気と、水分を含んだ重い空気が僕たちを包み込むのを感じたけど、実はそれどころじゃない事態が目の前で起きている。アンジェリカが歩く度に、ぷるぷるとおっぱいが上下に揺れるのだ。


 目の前でぷるぷると震えるアンジェリカの小さなサクランボは、まるで僕を挑発しているようだった。むしゃぶりつきたい。アンジェリカのおっぱいは舐めても良いと許可が出ている。僕を拒むものはなにもない。けど……。


 ここは大浴場だ。濡れた石の床はよく滑るだろう。もし、僕がおっぱいを舐めて、アンジェリカが驚いて転んでしまったら可哀想だ。僕はグッと堪えて、目の前で揺れるサクランボを眺めるだけで我慢するのだった。


「まずは、体を洗いましょうねー」

「クー」


 まずは体を洗うのがこちらでのマナーなのかもしれない。裸のメイドさんたちが持って来てくれたお湯を張った大きな盥の中にゆっくりと降ろされる僕。お湯がじんわりと体を温めて気持ちが良い。


「ク~」


 人間だった時なら「あ゛~」と濁ったおっさんボイスを上げていただろうが、今はかわいらしい鳴き声が上がるのみだ。


「気持ち良さそうですねー」


 アンジェリカがお風呂用の小さな背もたれの無いイスに座って、ちゃぱちゃぱと僕にお湯をかけていく。全身がポカポカして気持ちが良い。


 黒髪のメイドさんが、泡立ったヘチマタワシのような物を恭しくアンジェリカに手渡したのが見えた。


「本当に姫様がご自身で洗われるのですか?」

「はい。だってルーは、わたくしの使い魔ですもの」


 なんと、アンジェリカが僕を洗ってくれるらしい。お姫様にここまでお世話されるとは……ちょっと驚きである。てっきりメイドさんに任せるのかと思っていた。


「なにも姫様が自ら洗わずとも私どもがお洗い致しますのに……」

「お父様にもくれぐれも丁重に扱うようにと言われておりますもの、ここはわたくしが。それに、わたくしはルーのお母様になると決めました。ルーのお世話はできる限りしてあげたいんです」


 一番年上の金髪のメイドさんがやんわりと反対するけど、アンジェリカの熱意に押し切られたようだ。アンジェリカは本気で僕の母親になろうとしてくれているのだろう。こんな美少女の母親とか、どんなご褒美だよ。全力でオギャリたい。


「さあ、ルー。体、キレイキレイにしましょうねー」


 アンジェリカが上体をこちらに倒して、僕の体を泡立ったヘチマタワシのような乾燥した植物のような物で丁寧に洗っていく。キュッキュッと鱗を擦られるのは気持ちが良いが、そんなことが気にならなくなるような、たいへんな光景が目の前に広がっている。


 なんと、アンジェリカが脚を大胆に開いて、そのツルリとしたお股やら、腕お動かすごとにぷるぷる揺れるおっぱいやらが丸見えなのだ。まるでM字開脚のように、僕に見せつけるように、アンジェリカの秘密の部分が丸見えになっている。


「姫様、少々はしたのうございます」


 たしかに、年上メイドさんの言う通り、お姫様がしていい恰好じゃない。


「でも、こうしないとルーを洗えません。今だけは見逃してください、マリア」


 でも、アンジェリカは止めるつもりが無いようだ。相変わらず僕からはツルリとした綺麗なお股がバッチリ見える。見ちゃダメだと思うけど、どうしても目が行ってしまう。


 ツルリで気が付いたけど、アンジェリカだけではなく、メイドさんたちも全員ツルツルだ。確実に20歳を超えている大人だろう年上メイドさん、マリアもツルツルである。


 もしかして、この世界の人間は、下の毛が生えないのだろうか? それとも剃っているとか? もしかしたら、この国では、下の毛は剃るのがマナーなのかもしれない。


「終わりましたよ。綺麗に流しましょうねー」


 そう言って、アンジェリカが僕に付いた泡をお湯で流していく。僕の体は小さいからね。それもすぐに終わり、アンジェリカに抱き上げられて、膝の上に降ろされる。


「綺麗になりましたね。かわいいですよ、ルー。」


 僕を見て笑顔を見せるアンジェリカの方がかわいいと思う。その笑みは柔らかく、たしかに母性を感じさせる笑みだった。


「少しの間待っていてくださいね。わたくしも体を洗わなくてはいけないの……」


 そう残念そうに言って、僕の頭を優しく撫でるアンジェリカ。


「アンネ」

「はい」


 黒髪のメイドさんが返事をして、アンジェリカの前で両膝を付いて恭しく畏まる。


「少しの間ルーのお世話を頼みます。湯船に入れてあげてください」

「かしこまりました」


 アンジェリカの膝の上から黒髪メイドさんの腕の中へと移される僕。


「ルーは小さいですから、注意してあげてくださいね」

「承知致しました」

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