第39話
「こんな事なら……遺書のある場所、教えておけばよかったな」
「遺書?」
その呟きを、コユキが拾い上げる。
ぼくもお姉さんが遺書を遺していると思わず、驚いてしまった。
「ああ……わたし、こんな性格だから、いつか誰かに刺されるかもーって……酔った勢いで書いちゃったのよ」
照れ笑いを浮かべ、物騒な事を言うお姉さん。
ぼくとコユキは顔を見合わせ、肩をすくめる。
「な、内容はちゃんとしたものよ!? 結構真面目に書いたんだから!」
「はいはい。それで、その遺書はいったいどこにあるんだい?」
「え……? 確か、ケースに入れてたから……あれ、あそこにあるのって……!」
お姉さんが何かを見つけ、身を乗り出した。
端に寄せられたテーブルの上に、小さなケースが置かれている。
「やっぱり! どうしてこんなところにあるのかしら?」
「誰かが持ってきたんじゃないかい?」
話から察するに、恐らくこの中に遺書があるのだろう。
だけど、ぼく達に開ける術はない。
いつかは気付いてもらえるだろうけど……。
「コユキさん……には、たぶん頼めないわよね」
「そうだねえ……あたしは掟があるから、人の世界には関与できないんだ」
「そう……」
肩を落とすお姉さんに、コユキがいたずらっぽく微笑む。
「だけど、相棒が勝手にやってくれるなら、話は別だねえ。……ミア?」
「……」
ちらりとミアを見やるが、黒猫はそっぽを向いている。
「はあ、困ったねえ……どうしたものかねえ……」
「……」
何がそんなに嫌なのか、一向に反応を示さないミア。
すると、コユキはため息をつく。
「仕方ないねえ……やっぱり、あたしが――」
「……ああ、もう。分かったよ!」
コユキが何かを言いかけ、それを遮るようにミアは嘆息する。
それからケースに近付き、玲奈さん達に向かって一声鳴いた。
ミアに気付いた玲奈さん達は、ケースを手に取る。
そして、中にあった遺書を発見するのだった。
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