第20話


「――待って!!」


 制止し、おじさんの元へ駆け寄る。

「……おじさん」

「どうした、ミライ?」

 苦笑を浮かべるその姿を、ぼくは目に焼き付ける。

「やっぱり、おじさんに言われた事、理解できないよ。でも……」

 そこで区切ると、深呼吸した。

「ぼく、絶対に忘れないよ! ちゃんと答えが出るときまで、ずっと考え続けるから――!!」

 だからと、小さく呟く。


「だから……今度こそ、見落とさないでね。幸せに、なっ、て……」


 途中から、嗚咽で上手く言葉が出なかった。月並みな事しか言えないし、格好がつかない……。

 唇を噛んで下を向きかけた時、ポンと大きな手が載せられる。

「ミライ、ありがとな」

 お礼を言われ、顔をあげる。

 おじさんは笑っていた。すごく、嬉しそうに。

 そして、目を閉じる。

「コユキさん、頼む」

 その一言で、白い死神は鎌を振り下ろした。

 ぼくの目の前で、おじさんの体は光の粒子となって解けていく。

 彼は最期にぼくを見ると、親指を立てた。

「     !」



 こうして、おじさんの人生は幕を閉じたのだった。

 彼から託された想いは、ぼくの胸の中に。

 先の見えない道を、まだ歩き続ける――。

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