第19話

「あんた、あたしの前に来ておくれ」

「――分かった」

 おじさんは促されるままに、コユキの前に進み出る。

「……ところで、その鎌どうするのかな? まさか、それでバッサリと首を……」

「首は切らないけど、体を斬りつけはするねえ」

 思わず後ずさるおじさん。……真っ青になるのも、無理はないと思う。

「いやそれ痛いよね!? 死んでもまた殺されなきゃいけないの!?」

「大丈夫、落ち着きなさい」

「やっぱ前言撤回! あんた死神だよ!!」

「おや、嬉しい事言ってくれるねえ」

「褒めてないから!!」

『死神』発言にのほほんと喜んでいるコユキだけど……うん。おじさん、大丈夫かな。というか、ぼくの時、大丈夫かな……。

「安心しな。斬りつけるといっても、対象は体じゃあない。あんたの“魂”だよ」

「……魂?」

「正確には、んだけどね。それがあたし達死神の仕事だからさ」

 魂を……“刈る”? 変わった言い方だな。

「……要は、痛くないって事でいいんだな?」

「ああ」

「――なら、来い!」

「あいよ、任された」

 力強く頷き、コユキは鎌を振り上げる。

 そこでようやく、ぼくは覚悟を決めた。

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