第15話


『最期なんだ。せっかくだから、ミライと話してやってくれないかい?』


そんなコユキの提案で、ぼくはおじさんと色々な話をする事となった。

バス停に設置されたベンチを見つけ、並んで腰掛ける。

ちなみに、当のコユキはどこかへと姿をくらました。たぶん気を使ってくれたんだろう。

だけど、何を話せばいいか分からず、ぼくは空を仰いだ。

すっかり夜も更け、満点の星が広がっている。

ひとまず今のぼくの現状を伝える事にした。

「……そっか。君もいろいろとあったんだね」

「うん……コユキの提案で、こうしてるけどさ。――正直、まだどうしたらいいか分からないんだ」

いや、本当は分かっている。おじさんのように、さっさと来世へ逝けばいいのだ。

でも、ぼくにはまだ無理だ。今までだって辛かったのに、もし次も同じ思いをしたらと考えると――。

「いいんじゃない? 悩むのも若者の特権だよ」

おじさんは咎める事なく、そう言った。

隣を見上げると、短くない人生を生きた大人の横顔が目に映った。

「俺も、昔は沢山悩んだなあ。……や、今もだった! ははは!」

「……そうだね」

この人も、きっと沢山の壁にぶつかってきた。その一角を、ぼくも知っているから。

「すごいなあ……」

目を瞑って、そんな事を呟く。

「ん?」

「おじさんは……それでも、自分の生き方を貫いたよね。――ぼくなんか、どっちつかずで……」

羨ましいと感じた時の事を思い出す。

そう、ぼくにはできない生き方で――すごく、妬ましかった。

「……君は、自分が嫌いなの?」

「うん……本当は、消えてしまいたいと思ってる」

まさに消え入りそうな声で、ぼくは呟いた。

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