第14話

こうして、ぼく達は再び、先程の場所に戻ってきた。

「まさかとは思ったけど、ホントにこのビルがおじさんの職場だったなんて……」

「まあ、死んだ原因、この会社にもあったからさ……腹いせってやつかなあ、はは」

これがブラックジョークというやつだろうか。正直、笑えない……。

「で、また中には入らないの?」

「……うん」

おじさんはしっかりと頷くと、どこか晴れ晴れとした表情を浮かべる。

「もういいんだ。確かに、恨みもあったけど……助けられた事もあったからね。こんな会社でもさ!」

それから後ろを振り返ると、コユキを見据えた。

「コユキさん」

初めて、おじさんは彼女の名を呼ぶ。

「あなたは、死神なんだよね。なら、俺の魂を送ってほしい」

ぼくはハッとしておじさんを見上げる。


「もう、未練はない。だから、あなたの手で終わらせてほしいんだ」


コユキはゆっくりと目を閉じた。

何かを悩んでいるようにも見え、普段と違う彼女に戸惑いを覚える。

だけど、次に目を開けた時には、そんな思いも霧散した。


「もちろんさ! あたししゃ死神。あんた達死者を導き、来世へ逝く手助けをする。それが使命だからね!」


白い死神は、太陽のような笑顔でそう胸を張った。

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