第2話 ニセ総理殺人事件-02
スピーカー越しに子供のみたいな甲高い声を聞いた瞬間から、俺は違和感を覚えてた。
「さっきと声、違う……」
俺の
「ええ、かなり縮小しました」
縮小って……何なんだ?
そう思いながら見つめる先、二つに割れたボディから今、小学生くらいの男の子が起き上がってくる。
この冷たい雨の中、半袖シャツに半ズボン。寒くないのか? と聞きたくなるようなカッコしてる。
こう言うのステロタイプってのかな、小学生のイメージってヤツ。
さっきの声は確かに大人だったのに、
あれ? こいつも……どこかで見たような気が?
「失礼ですが、貴方は?」
小学生は側に立ってる革ジャンを着たオッサンに、そう問いかけた。
「な事ぁ、どうでもイイだろうがよぉ。それよりオメェ、あの野郎を追っかけて来たってぇのかよ?」
「えぇ。そこまで知ってる以上、貴方ここの住人じゃ有り得ませんね?」
「まぁ、な」
「
うわ、思いっきり皮肉な笑い方したよ、この小学生。にしても、ここのって……
「てぇ事にならぁな」
「貴方達のせいで、私の仲間が何人死んだと思ってるんです?」
「済まねぇ」
え? オッサン妙に弱気。さっきまでと全然違う。
「あの野郎を取り逃がしちまったせいで、相当な被害が出てる事ぁ知ってるがよぉ」
「その程度で済む話だと、本気で思っているんですか? 35人もの命が失われたんです。私の先輩も犠牲になりましたよ! 全て貴方がたのせいでしょうが!」
「あぁ、その通りだぁな」
オッサンの言葉に、小学生は口を閉ざして睨みつける。オッサンも何だか
そんな沈黙が数秒。先に声を出したのは小学生の方だった。
「で、また取り逃がしたんですか」
頭を振りながら、やれやれって感じで言う小学生にハッキリ判るくらいイラっとしつつ、オッサンは応じた。
「まぁ、その通りなんだがよぉ……」
「せめて、その少年を救えたのは不幸中の幸いでしたね」
俺の方を向きながら、元着ぐるみマンの小学生は言う。
「君、ここの学生さんですか?」
この区の高校生。って意味だと思い、俺は頷いた。
「あの、総理が殺人って……」
「あ? ありゃ、ここの
はい? ここのって?
「貴方、ここの住人に話して言い理由、無いでしょう?」
「あ? どのみち記憶消しちまうだろうがよぉ? 変わりゃしねえって、どんな話、聞こうがよぉ」
な、何の話してるんだ、この二人。記憶を消すって?
「それは、確かに当然の処置では有りますが……だからと言って、巻き込んで良い事では無いでしょう」
何だよ小学生のくせに、大人みたいな話ぶりって。そりゃ35人も犠牲者が出る事件に
「ボウズ、あの野郎はなぁ……」
オッサンが言いかけた途端、遠くから聞こえるサイレンの音が。
「あ? こっちに向かってきてやがんなぁ」
「当然でしょうね」
そりゃ住宅街で、あれだけ何発も銃声を鳴り響かせたんだから、通報されるよね。
でも、これでこの人達も警官隊に合流できるし、殺人犯を包囲できれば。
「捕らえに来た者が、囚われたら話になりませんね」
「あぁ、シャレになんねぇ」
「とりあえず、ここから退避した方が良いでしょうね」
え? 逃げる? どういう展開なんだよ。
そんな俺の疑問と全く無縁で、小学生は総理が投げ捨てたスマホらしき物を拾う。
「良かった、壊れてはいませんね」
そう言いながら更に、あの危険な電気シェーバーを拾って、大事そうに眺めた後、戦隊ヒーローのボディに入れた。
次の瞬間、倒れたままの着ぐるみから、押し潰されそうな感じさえする、ものすごい圧力が広がる。思わず腕で俺は顔を
「え? どこに……」
圧力が消えた後、着ぐるみは消えていた。さっきまで、そこに倒れていたのに。
でも雨のせいで、ぬかるんでる地面には確かに有ったって形跡が残ってる。更にその周りにあのトンデモない圧力の残した模様のような跡まで。
なら、どこに消えてしまったんだよ。跡まで残ってる、あの圧力って一体?
俺は混乱する一歩手前で、呆然と雨の中、立ち尽くしてしまったんだ。
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