第45話 アンダーグ帝国の優しい少女

 人間は生まれつき善か悪か? ――これは太古の昔から論じられてきた議論で、それはもう紀元前のローマ、なんちゃら文明とかの時代にも語られているところです。


 生まれつき『善/悪』と解いた孟子と荀子。魂という概念を生み出した古代ローマの哲学者たち。それらの議論はやがて想像から科学的検証に移行し、心理学という学問のなかであらゆる『人間の本性』が明らかとなっています。


 スカイランド人、アンダーグ帝国人が地球人とおなじを備えてるかどうかはわからんが、今のところ地球人とだいたいいっしょな感じだね。いやまあ幼児アニメにそこまで深い設定は要求しませんわよ。きちんとキャラクターを通して教育アニメしていただければ幸い。


 嬉しさや楽しさという感情があるように、恨みや怒りだってちゃんとした人間の感情です。そういった感情はむしろ持つべきとさえ言えるかもしれません。今回の話のなかでカイゼリンがどのような結末を迎え、なぜ現代においてスカイランドに牙を剥くのか――いよいよすべての伏線が回収されていくのですね、楽しみですね!




 あれ、ツバサくんこっちの世界に来てたっけ? とおもったらモブ鶏肉でした。うまそう。


 さて、キュアノーブルは初戦闘においても意気揚々としておられる。んでもって必殺技は『マジック・アワーズ・エンド』かな? 手刀ビームを振りかざしワルモノを真っ二つに! ってやったら幼児アニメじゃなくなるのでランボーグさんは「スミキッター」で終了しました。


 プリキュアのナゾパワーは発揮されず、ぷにバード族の村は壊滅したままのようです。残念な結果ですがそのかわり王都に引っ越しできる権利を得られたんだから前向きにいこ?


 ほんと、住民に強制退去を願うなら王都移住 + 費用保証 + その他もろもろのオヤクソクをいただけないとね?


 あ、オープニングがカイゼリン嬢にチェンジしてる。ここの歌詞からしてカイゼリンは何らかの絶望を抱えていると見て良いのでしょう。まあ十中八九パパがアレしちゃったんだろうけどそれは後で語られることです。


 プリキュアってね、ふかーく考察しようとすればするほど闇が深かったりするものなのよ?




 やさしい少女がなぜやさぐれたのか? こういうストーリーけっこうすきです。


 力こそ正義とされるアンダーグ帝国にて異端とも言えるカイゼリン嬢。スキアヘッドは当時からこんな感じだったんだね。しっかしこの大海のよどみのような場所に溜まるアンダーグエナジーとはいったいなんなのだろうか? あれか? こういうアニメにありがちな『人間の負の心のパワー』とかそういう感じか?


 まあいいや。それよりも手をふるかんたんましろんかわいいんだけど?


 お店ではやきたーいが販売されてるようです。難民にはとりあえず無料で食糧提供。これができるってよほどの財力というか資産力というかアレよ?


 本来なら自国が充分に潤ってなけりゃこんなことはできないってのをしっかり覚えときましょう。さて、街の復興を手伝うソラ、久しぶりのスカイランド神拳と思ったら画まで北斗の拳で草。ソラちゃん出る作品間違えてない?


 スカイランドは充分な資産に恵まれているようです。だからこそ人助けを無償でできるのですが、一方で自国にそのような余裕がない国は難民を受け入れるのすら困難というか、自国の治安にいろいろな問題を抱えてしまったりします。


 人間には欲求があります。根本的な3大欲求とされる『食欲・睡眠欲・性欲』からはじまり、それが充分に満たされていると生活する上での『衣食住』への欲求が膨らんでいきます。


 同じ『食』があるとはいえ、これはより高い次元、たとえば高級ステーキが食べたいとか、外食のコース料理を堪能したいとかそういう感じです。今日を生きるために必要な食欲とは別、ということですね。


 まずは『生きるための不足を補う』ことからはじまり、続けて『より楽しく生きるための欲求』が現れる。ブランド物のバッグが欲しい、あれ欲しいこれ欲しいと言えるならそれはとても幸せなのだ、と言い換えることができるかもしれませんね。


 スカイランドとアンダーグは地政学的に見たらどんな国なのか……ちょっと気になりますねぇ。




 エルレインとカイゼリン。ふたりの邂逅はふたつの国の諍いを終える良い機会となりそうですが、まあ"今"のカイゼリン嬢からしてアレなんやろなぁ。


 戦争を終わらせるにはどうすればいいか? ――互いを信じ合えばいいのさと言葉ではかんたんに言えるけど、実際問題そうかんたんにはいかないのよねぇ。


 日本から見ても、現状ウクライナとロシア、ガザ地区が戦争状態にあるというのは容易にわかります。しかし、現実の世界ではありとあらゆる箇所で現在戦争が行われています。


 ミャンマーの民族間の争い、アフリカ大陸における諍い、アフガニスタンなどで勃発しているテロの反乱、麻薬カルテルとの紛争、内戦――これらは報道されることがごくわずかですが、実際にその国で起こっていることです。


 人は好きで命のやりとりをするワケではありません。ただ、そうせざるを得ない理由がある。諍う両者の一方の理由を受容すると、もう一方の理由を無視することになる。そういった積み重ねが、人の命を散らす行為に発展してしまうのでしょう。


 どんな人間だって、エルレインの立場に立たされたら同じコトをするでしょう。するしかないでしょう。こういった問題を解決する手段はないのか? ――個人が考えるにはあまりにも大きな問題すぎて、わたしにはどうすればいいかわかりません。


 キュアノーブルは『力』をもって戦うことを選択しました。今までとちがってドスの効いた声、とても魅力的です。


 ところで「弱い者いじめしかできない~」ってセリフ、イジワルなオッサンは「強い者にケンカを売るのはいいのか?」っていう重箱の隅をつつくようなツッコミが浮かんだりしたけど、まあアナタはそういうことしないようにね。ちなみにこれは詭弁というヤツで、もっとそれっぽい用語があったんだけどど忘れしたので気になった方は各自ググってみてください。


 さて、ノーブルの必殺技が炸裂したかと思いきや、なんとパパの結界を破ったカイゼリンが身代わりとなってしまったようです。


 プリキュアといえど『力』によって放ったパワーは、カイゼリンの胸を深くえぐりました。過ちに気づくノーブルとカイザー。


 カイザーはアンダーグエナジーに傷を治す力はないと言います。しかし『今』のカイザーならできる。力とはスカラーな概念であり、それをどう活かすかは使い手次第ということでしょう。そう考えるとアンダーグエナジーっていったいなんなんだと思うけどそれはプリキュア考察ガチ勢に任せます。




 さて、結論としてはカイゼリンの尽力があり、スカイランドとアンダーグ帝国が和平を結んだというタイミングで元の時代にも出されたワケですが――いやこっから一体なにがあったよ? 考えられるとしたらスキアヘッドがなにかしたって感じだが……おい。


 スキアヘッドおまえやっぱラスボスだろ。


 元の世界に戻され、ましろはエルレインのセリフによってカイゼリンの行動を止めます。が、その言葉が逆に彼女の逆鱗に触れちゃったっぽく、プリキュアさんを亡き者にしようと『力』をもって制圧しようとします。


 けどねカイゼリンちゃん、プリキュアのパワーの源は『力』じゃないんですよ。それに気づけなかったのがアナタの敗因、いや、プリキュアにとって勝ち負けなんて関係ないのよ。そのヘンは『プリキュアオールスターズF』で学習しておきましょう。


 そもそもBGM付きの必殺技は刺さる確定だから。


 古傷が開いたこともあり『力』として押し負けるカイゼリン。技を受けようとしたところでスキアヘッドがそれを防ぎます。


 チッ、もう少しでカイゼリンの「スミキッター」が聞けたのに。しかしスキアヘッドおまえそのセリフ――まさか『カイゼリン』ではなく『強い者こそが正義というアンダーグ帝国の主』を守るっていう意味じゃねーだろうな? ――そういやアイツカイザーから弱いとか使えないとか言われてたなぁ……伏線?


 カイゼリンはスキアヘッドに連れられ消えてしまいます。彼女を憂うスカイに対し、マジェスティは「また話し合おう」と声をかけるのでした。




 話し合いで解決しよう。これは基本かつ大切なことであるように思えますが、たとえば『さんざん好き勝手破壊行動をされた挙げ句、なんの保証もなしに相手側から「話し合おうぜ☆」なんて言われた日にゃあどんなキモチになるか?』ってのがオトナの世界になると混ざり込んでくるからね、ちょっと幼児向けアニメのようにかんたんに行かなくなっちゃうのが難しいよね。


 互い立場や主張があるからこそ話し合いが難しくなります。でも、だからこそ話し合い、互いを知り、和平を結ぶにはどのようなことをすればいいのか? を考えていかなければならないのですね。


 こういう問題があるからこそ、わたしは『話し合いができる人はとてもすごい』と個人的に思います。あぁ、世界が平和になればいいなぁ。




 次回予告。シリアス後のちょっと休憩タイムのようです。っていうか次回はクリスマス回だね! ――え? スリクマス?


 ヤキターイといいスタッフさんネーミングてきとー過ぎない?


 しっかしもうクリスマスの時期かぁ。あちこちでケーキ予約受け付けてるし、どこのお店もキラキラ着飾ったりクリスマス商戦繰り広げてるしもうすっかりスリクマスだね。


 ちなみに、今でこそ12月前からクリスマス商戦が始まったりしてるけど、ほんの数十年前はクリスマス商戦は1週間くらい前からはじまる感じで、今の段階でもキラキラしてないお店とかザラにありました。ま、今はそうでもしないと買ってくれない時代になった、ということなんだろうね。


 こういう季節限定のイベントに乗っかって売上を増やそうという意気込みは商魂たくましくてなによりなんですが、それをすると普段の売上というか、毎回イベント臭出さないと普段の商品さえ売れにくくなっちゃうというリスクがあったりするのだけどっていうツッコミは素人考えですね、はい。


 っていうか恵方巻商戦もうはじまってて草。いくらなんでも早すぎんだろ。




 いやー本日も楽しい30分間でした。諍いを解決する難しさ、話し合いの大切さなど幼児向けアニメで済ませるにはもったいなさすぎる要素がてんこ盛りでしたね。


 プリキュアは幼児アニメですから、そこまで複雑な演出はされません。けど、だからこそ人間にとって必要な根本的要素が見えてくるのではないかと思います。


 この世界が平和でありますように。日光市の片隅でそう願い、そして、アナタの人生にも幸多からんことを願うオッサンなのでした。

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