第21話 心
自分の心って、のぞきこんでみると、スクリーンのようになっていて、何やら映像を見ることができる……よね!
体験したことが映っていれば、そりゃ、記憶したことが映ってるだけだし、体験したことがないのに映像になってるとしたら、それこそ、自分の想像力が勝手にイメージしたんだろうね。
とは言うものの、自分ではイメージしようというつもりはまったくない上に、そればかりか、一度も体験したはずのないことが心の映像に映ったという経験をした人はいないだろうか?
つまり、どこからか降りてきたってやつだ。
「そんな経験はみんなあるに決まってるだろ!」
そう言われたら、それまでのことではあるが……自分にとっては、つまり、こういうことだ。
十二年前の東日本大震災が発生したときのことだ、その一週間前ころに、自分の心の中に、ふいに妙な映像が降ってきたことがある。
それは、浅い海の底と砂の映像で、その砂が何度も何度も、サーッと引いていくのである。
まるで引き潮のときに、砂が引っ張られていくといった感じの砂の動き方で、自分の心というか胸のあたりで動きを繰り返しているのだ。
そして、その一週間後だ、大地震が起きた。
TVの解説では、すべてのパターンがそうとは限らないが、津波が来るときは、一旦、海底が見えるほど潮が引いてから、津波となって押し寄せることもあると言っていたから、まったく同じ感覚だったとおどろいた。
「あのとき心の中に見た引き潮の感覚と映像はいったい、何だったんだろう?」
今でも不思議に思っているが、そう言えば以前にもそんなことがあったことを思い出した。
それは高校一年生の夏休み明けのこと、まったく学校に行きたくなくなって、むしょうに虚しさという感覚に包まれたことがあった。
そのときだ、自分の心に映った映像は、一面の砂漠の中で味のまったくしない砂を食べていた自分の姿だった。
たぶん、学校という場所に何の感情もなくなった自分を象徴した姿だったんだなと思っているが……
まあ、誰でもみんな、そういう経験ってのはあるよね……
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