第11話 待つ世界と待たない世界
じれったいことではあるが、われわれは、何についても待たなければいけない世界に生きている。
子供も待たなければ大人にならないし、種も待たなければ葉も出ないし実もならない。
待つことは当たり前であり、待たない世界などあるわけがないと思っている。
それゆえ、何でも待つことに慣れてしまっているから、必ず、ものごとを行うときは、段取りや手順というものを考え、階段を一歩一歩登っていくように計画的に実行していく。
もし、仮に、待つことのない世界があるとしたら、たちまち、欲しいものはすぐ手に入るし、したいことはすぐにできる。
何よりかにより、人類の願望は、魔法使いが、指をパチッとするだけで欲しいものが降ってきたり、杖をサッと振るだけで人が豚になったりする物語に見られるように、何でも、即刻、実現したらいいと心の底では思っている。
だが、待つことなくやってくるものがある。
お風呂にぷかぷか入っていたら、思いがけず水に浮く力を発見したり、おそろしい稲妻を見て、電気なるものを思いついたりと、およそ、段取りと違うことが発生することがある。
これを、あたかも、人は、ひらめきとか創造とかと言って、大げさな言い方をすれば、人類の生活を進歩させてきたのかもしれない。
とは言え、これらには計画性はなく、とつぜん、舞い込んでくるから厄介だ。
「今日は何かいいことないかな」「この状況を何とかする方法はないかな」と、頭のよじれるほど願って待ち望んでいてもダメである。
だからと言って、あきらめる必要はない。
誰にあっても、じっと待つことなくして、いきなり、何かのきっかけで、素晴らしい発想が降ってくるかもしれないのだから。
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