第10話 運命
自分の容姿を鏡で見ると、もう少しよくならなかったのか、どうしてこんな私に生まれついたのかと運命を呪う人もいるかもしれない。
しかし、この運命とは何なのか?
そこで、書店で運命について書いてある本をいろいろ探して一冊買ってみた。
題名は『運命なんてない!』である。
その本にはこうあった。
世の中を広く分析して考えてみると、容姿端麗に生まれる確率はたったの一割で、あとの九割はまあ普通の容姿に生まれるとすれば、誰かが、一割の容姿端麗に入るわけだが、それは運命ではないと言っている。
なぜなら、一割の容姿端麗が生まれるのは偶然でなく、遺伝的に確実であり、この科学的な結果の方が先なのである。
そして、生まれたのちに、やがて、自意識が芽生え、自分の容姿について容姿端麗として自覚するだけの話だから、そのような容姿が誕生するのも科学だし、個体に意識が発生するのも科学であるから、運命のような偶然的な選択の余地はあり得ないというわけだ。
また何でもそうだとも言っている。
運命的な事故に遭うのも、人間生活を送っていれば、誰であっても、一生のうちに、確率的にも全人口の一パーセントの人はそういった事故に遭うという。
一億人の人口がいれば、百万人であり、一日三千人の計算だ。
たしかに、自分も交通事故にあったり、プールでおぼれて死にそうになったりしたなあ。
こうして確実に数パーセントの人は何らかのひどい目に合うのだから、確実という言葉を使う以上、それは偶然でなく科学なのだ。
だから、この本は運命などないというのだ。
運命が当たり前なら、くよくよせずに、受けて立つしかないってことなのか……
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