04
一方レネディール大陸の北、人狼の国であるトルガイ王国の首都リジアに向かう道すがら、ハンクは自身が所属していた
「ハンク!ハンクじゃないかっ。お前生きてたんだなあ、そうならそうと知らせてくれればよかったのに」
集団の中には、半人狼のよしみで仲良くなった兵士レスティの姿があり…ハンクは二の足を踏んで立ち竦んだ。
拠点としていた街が
「レスティ……お前も息災だったか」
「まあ、な…。北から虱潰しに人間どもの砦を潰してたんだがな、奴らも黙ってなくて、結局トグルで取り逃しちまった…」
互いの無事を喜んだのも束の間、自軍の犠牲の数を聞いて二人は
「へえ、へクセ。おっ前、そんなのよく見つけたなァ。それって確か、50年前に全滅したヤツだろ。その子は一緒じゃないのかよ?」
「それが…」
ハンクはレスティに今までの
「うえ、豚みたいに肥ったババアはオレでも無理。お前、「そういうの」多いよな。いい奴なのに勿体ない」
不運続きに同情したレスティの紹介で、ハンクは思っていたよりも早くリジア北部の貧民窟にアパートを借りる事ができた。
そこそこ広い室内は明るく、海辺の丘に立地するため見晴らしがいい。
簡素なテーブルセットとベッドしかないが、独り身であるハンクにはそのシンプルさが丁度良かった。
───はたして、エマは今何処にいるのだろうか。身の安全が確保され、尚且つ生活物資も揃っている
胸ポケットから四つ折りの紙を引っ張り出すと、テーブルの上に広げる。
そしてあちこち捜して、ようやくズボンのポケットからエマの真珠を1粒取り出すと、地図の上に置いた。
ダウジングの要領で、真珠を生み出した本人の居場所を割り出そうと考えたのだ。
紆余曲折を経たが、どうやら方法が正しかったようで、真珠は次第にゆっくりと動きだした。
オーロラを纏った大粒の真珠は北東のトグル地方に程近い山岳部を東に向かって動き───やがてリジアから真東の方角でピタリと動きを止めた。
「ふむ…サナムか。ずいぶん遠いな」
そこは
外敵が踏破できない山岳部に住み着く彼らは警戒心がとても強く、集団意識も強い。
仮にエマがそこに辿り着いても、人馬族は外からの者を受け容れない気がしてならない。
(早く、見つけなければ。エマが虐められていたら可哀想だ!)
しかし、サナムまでは最低一週間はかかってしまう。
どうしようかとウンウン悩んだ末に、ハンクはかつて自身が折伏した使い魔に様子を見に行かせることを思いついた。
「
ハンクの詠唱に合わせ、闇の底から使い魔が這い上がってくる。
底無しの影に蠢く気配は、
群青-夜空の色をした鬣を靡かせて嘶きと共に現れたのは巨大な
「ぶふんっ!!…ブルルル…」
エマの真珠が纏う魔力を嗅いだ
「久々に呼び出したと思いきや、厄介事とは。なんたる扱いか!」
「この魔力を辿って行け。お前の足なら可能だろ」
「あああ腹の立つ!貴様など、契約さえなければ蹴りあげてやるのに!」
「うるさい、早く行け!」
一刻も早くエマの状況を知りたいハンクは、使い魔に様子を確認して来るように命令を下したのだった。
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