02


一方その頃────。

魔族軍は首都リジアを本拠点に北西の山岳部へと進軍して人間エダイン・ウルグの砦を落とした。

しかし、落ちたとはいえ人間エダイン・ウルグらが住処を捨てて逃亡した可能性もなきにあらずである。


「…これ、血の跡だ…点々と東に向けて続いている」


黒焦げの死体が転がる人間の砦にて仲間と共に残党狩りをしていた少年兵レスティは、地面を夥しく染める血痕と、それが点々と東の方角に向けて続いていることに気が付いた。

────たぶん、残党そいつはここで矢を受けたんだ。でも死なずに、逃げ出した。

次いで嗅覚が拾ったのは、残党は男で中年の人間エダイン・ウルグ、そして左肩に矢を受けたことだった。


「くそう。ここは根切りにできなかったのか…。よし、すぐに報告だ!」


「ああ!」


レスティとその同僚の報告は野火の如くの速さで全軍へと伝わり、レネディール大陸の北東部トグル地方に向けて再び動きだしたのだった。

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