これは私のお話
「でもさぁ……なんでだろうな。何回も死に目にあったのに……あったのに……」
涙。涙が出てきている。私も、彼氏も。
「人が死ぬって……大事な人が死ぬってなると……泣いちゃうんだよ。潤の時も泣いたよ。海の上で泣いたよ。だって揺さぶっても起きないもん。死ぬなら『死ぬ』って言ってくれないと寂しいじゃん……悲しいじゃん。要らんことばっか言うのに、そんな大事なことは言わないんだぜ……アホだよ。最低なヤツだよ」
……どっちもどっちだったんだ。生き過ぎても、生きなさ過ぎてもダメなんだ。人間はちょうどよくできてるはずなんだ。
はずだったんだ。だからこうして私たちは泣いている。苦しんでるんだ。
「君も……死んじゃう。もう疲れたよ。まっすぐに歩いていたはずなのに……もうぐにゃぐにゃの線になっちゃった。死ぬべきところで死ねないとこうなっちゃうんだよ人間って。家族も死んだし、友達も死んだ。君と出会う前にも恋人はいたさ。普通に別れることもあったし、死に別れもあった。結婚して、普通に暮らして、子供もできたことがあった。先に子供の方が寿命で死んだよ」
先のない道。私は壊れた橋を渡っていた。私だけが渡っていると思っていた。1人で。孤独に。
しかし隣の橋には彼氏がいたんだ。私と違って壊れてはいない。ただ永遠に続いている。彼氏は永遠に橋を渡り続けていたんだ。
「……ずっと聞こえるんだ。『なんでお前は生きてるんだ』って。『いつまで経っても姿は変わらないんだ』って。耳が壊れるくらいには聞いたよ。俺にもわかんないのに聞かれても困るな」
そう考えてみると、橋には私だけがいるんじゃなかったんだ。普通の人。普通の人も私と同じ橋を渡っていたんだ。
「もう嫌だ……俺は……僕は……誰かと死にたい……」
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