境の向こうの古書奇譚

虚城ハル

序幕

 そこではこんな噂があった。


 坂守町さかがみちょう古町通ふるまちどおりには、古書店がある。

 営業中は店の扉が開いていて、一人の少年が笑顔で出迎えてくれる。


「いらっしゃいませ!」


 しかし、古書店に用があるものの古書店そのものに用がない場合は、

 こう言うといい。


「1ページ目にはプロローグを、

 2頁目に断章だんしょうを、

 物語の終わりを教えて下さい」


 すると少年は成る程というかの様に一つ頷いて、


「分かりました。少々お待ち下さい──」


 そうして、店主へと通されるだろう。

 上手くいけば、

 抱える問題が解決するかもしれない。


藤邑ふじむらさーん。お客さんだよー」



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