第6話

 よく見ると、おじいさんはすごく小柄だった。ケンより少し大きいくらいで、紺色の作業着の上下、チャックを上まであげ、茶色キャップを被っていた。

 「君、見えるでしょ?」

 先ほどの質問を聞いて、モンとケンは身構えていた。自分の恐怖が2人に伝わったのだろうか。その様子を見て、おじいさんは杖と反対側の手を前に出した。

 「待て待て、わしは別に怖いもんじゃないよ」

 そう言うと続けて

 「わしは簡単に言うと除霊のバイトを探してるもんなんじゃ。まぁ、興味があったらここに来てくれ」

 おじいさんは、モンとケンが身構えている横をゆっくりと歩いてチラシを渡してきた。「アルバイト募集中。ご祈祷、お祓い」の大きな文字。あとは細かい説明に、住所はこの辺の住宅街…学校の近くの場所だった。確か、ここにはそこそこ大きな神社があったような…。

 「それじゃあのう」

 そう言うと、おじいさんは歩いて駅の方に向かっていった。気付くと辺りは薄暗くなり、街灯に電気が点いていた。

 ケンが見るからな汗をかいているのがわかった。

 「ケン大丈夫か?」

 「あのおじいさん、とんでもない力を感じたよ」

 「力?ってどんな感じ?」

 モンが話し始める、あまり顔色は良くなさそうだ。

 「ええ、私たち精神や魂は神力じんりきとか魂力こんりょくって言うような力が宿っているの。俗に言う精神力みたいなものかしら。それが半端じゃないのよ」

 「ふーん。そうなんだ。よくわかんないけどすごいんだ」

 ケンが慌てるようにして続けた話す。やっと少し落ち着いたのか表情が穏やかになっていた。

 「すごいというか、化け物だよ」

 「2人も大概変だけどね」

 「なにそれ、失礼じゃない!」

 モンも少し笑顔になっていた。


 家に帰り、食事をとって自分の部屋に戻った。モンとケンと俺は貰ったチラシを机の上に置き、3人で腕を組みながらチラシと睨めっこしていた。

 「ケン、モン。俺はお金がほしい。夏休みにも入るし。俺はお金がほしい。」

 扇風機の回る音が聞こえる。しばらくしてから、ケンが話し始める。

 「まー、お金は貯まると思うけど、あんなやばい人の近くで働くの大変だと思う。」

 「そうねー、でも色々な経験を積むことで私たちも強くなったり生活が捗ったりするんじゃないかしら」

 モンの話しを聞いて、ケンも深く頷きながら深くため息をついた。徐ろに口を開いて一言だけ呟いた。

 「確かになー」

 しばらく、3人で言葉の余韻に浸っていた。扇風機がその余韻を吹き飛ばした頃に、俺が切り出した。

 「とりあえず、神社に行って話しを聞いてみよう」

 俺が、そう話すとケンとモンはこちらを見て、無言でゆっくりと頷いた。明日は夏休み前の最終日、部活が終わったらちょっと顔を出してみることになった。

 人生初のバイトになるかもしれないと思い、俺は小さな子どものように寝れなくなったのは、モンとケンには秘密にしておくことにした。

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