ばけもの図鑑を作る男
仲仁へび(旧:離久)
第1話
人間ならざる存在。
かといって普通の動物でもないもの。
強い力、異質な力を秘めているもの。
ばけもの。
その者たちの力は、ばけももでない者たちを脅かすことがある。
しかし時に、ばけもものでない者たちに寄り添うこともある。
とある一人の少年は、ばけものという存在に興味を持った。
両親の仕事の関係で数回引っ越しを経験した少年は、自分が住んだ町や村で、それぞればけものの事を知った。
強い雷撃をうみだすばけものは、発電所に勤めている事があった。
大きくなるだけのばけものは討伐隊が、さしむけられることもあった。
ただただ非力で見た目が異なるばけものは、邪魔者扱いされ、迫害されることもあった。
そうかと思えば、同じ非力なものでも、ばけものでない者に愛されて、守られる者もいた。
だから、異質なその存在に心惹かれた男は、図鑑を作ることにした。
「こんな多様な面を持っているばけものを図鑑にしたら、きっと面白いぞ。人間はみんな、似たり寄ったりだからなあ!」
男は人の顔を覚えられない、声を聞き分けられない人間だった。
だが、不思議とばけものの区別はついていたのだった。
ばけものの姿をもとめて、男は世界中を旅する。
「人と違う生き物を見つけたいんです」
鋼でできた荒野。
「だれか情報を知りませんか?」
虹が消えない島。
「お話を聞かせてください」
シャボン玉だらけの国。
「ふむふむなるほど、それは興味深い情報ですね」
男は旅の各地で、いろいろな化け物に出会った。
多くのばけものは、人と距離を置いていた。
すすんで世間から離れてくらしているか、そうせざるを得ない環境におかれていた。
「俺たちにかかわらないでくれ!」
「迷惑なのよ目立つから、私たちを探さないで!」
けれど、ばけものと共に生きる人間たちもいた。
「人と見た目が違うことくらいどうってことないよ」
「人間と同じ心を持っているんだから」
ある程度、図鑑を完成させた男は、また興味を募らせる。
ほんの少し昔より膨れた興味を。
「次はばけものと共に生きる人間の図鑑を作ろう」
男は次の旅に出る。
人でありながら、異質で奇怪に見える者たち。
その存在に惹かれて。
ばけもの図鑑を作る男 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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