男嫌いだったはずの義姉妹がいる合コンに偽って参加したら、二人との距離がバグり始めた
でずな
第1話 俺たちの関係
「でさぁ〜……」
「えっ!? かっこいいぃ〜」
俺は居酒屋に来てすぐ、いくら目的があろうともやはり来るべきじゃなったと実感した。
右隣には3人の男性。対面には4人の女性。
丸メガネをかけ、帽子を深く被って変装してる俺以外全員、キラキラと陽キャの空気を垂れ流している。
精神的ダメージをくらうことがわかっていても、この場に変装をしてでも足を運んだ理由。
それは、男嫌いの義姉妹が合コンに参加すると耳にしたからだ。
「あのぉ〜もしかして未成年の方でしたか?」
「あっいえ。ちょっと考え事をしてたもので」
家じゃ見たことのない優しい顔の義姉。
そして聞いたことのないアニメ声。
俺が偽って合コンに参加してるとは、気づいてなさそう。
「お姉ちゃん。アニメ声なんて作ったら、逆に気持ち悪言って思われると思います」
「えっ? 男の人はアニメ声でイチコロなんじゃないの?」
「……私もどこかで聞いたことあるきがします。でも、実際のところどうなんでしょうかね?」
「ね。……どうなの?」
「えっと」
俺、大学一年生の
それだけ聞けば、なんとも聞こえがいいものか。
その美人な義姉妹は極端なほど男嫌いなのだ。もちろんそれは、家族である俺やお父さんも対象。
紺色の長髪が特徴の義姉の宮谷いとは、
「チッ」
男とは一切言葉をかわさず、ただ自分が不快だということを舌打ちだけで伝えてくる。
外で見るいとは穏やかで、優しくて、いいお姉さんのオーラを発している。が、家ではいつも少し目を吊り上げ、睨みをきかしている。
そして白髪でさっぱりした短髪が特徴の妹の宮谷さとは、
「お姉ちゃんを獣の目で見ないでください。気色悪い」
自分が思ったことを球速150キロのようなスピードで、ド直球に伝えてくる。
外と家で違うところがあるのかは……わからない。いとは同じ大学に通っていることもあって接点があるが、さとはまだ高校2年生。
家族になり、同じ屋根の下で暮らすようになって1年弱経つが、知らないことの方が多い。
唯一知っていることといえば、生粋のお姉ちゃんっ子だということだけ。
俺はこんな男嫌いの義姉妹だが、家族として仲良くしたいと思ってる。
なので過去、二人の誕生日にお祝いパーティーを主催したり、クリスマスの日に欲しそうにしていた高級ブランドのバックを買ったが……結果は言わずもがな。
二人の男嫌いは徹底していて、崩れることを知らない。
どうしたら。どうしたら仲良くなれるんだろう……。
そんなことを、大学の食堂で考えていたとき。
「あーそういや、お前んところのめちゃくちゃ可愛い義姉妹がさ。今度俺が主催する合コンにくんだよねぇ〜」
正面に座っている大学からの友人、
「はっ!? なんだそれ!?」
「って、おいおい。いきなりそんなデケェ声出すなよ」
「あ、すまん」
どうやら今の声で周りから注目を浴びてしまったらしい。
俺は切り替えて口元を手で隠し、対面に座る蓮に体を寄せた。
「どういうことなんだよ。二人が合コンって……。嘘じゃないだろうな?」
「なわけねぇって。だっえお前ん所の義姉妹、俺が合コンを主催するって噂を聞いて、わざわざ直接『参加したい』って言ってきたんだぞ?」
「おーまいがー」
あの男嫌いのいととさとが男に直接合コンの参加を申し出るなんて、信じられない。
俺の知らないところで、なにか二人に考えを変えるようなことがあったのだろうか?
「ちなみにそれっていつの話?」
「えーと。一週間前くらい」
「え」
この一週間。二人が家で俺に向ける男嫌いは、一切変わってない。むしろ、舌打ちや暴言に磨きがかかったように感じている。
ということは、もしかして俺のことを特定で嫌いなのかな……。
「そんな落ち込んだ守にびっくちゃぁ〜んす。なんで俺がわざわざこの話を守に話したと思う?」
「報告?」
「ま、それもあるけど……合コンの人数足りてないんだよね」
白々しい。俺が知りゆる中で一番人望がある蓮が、合コンの人数が足りないなんてありえない。
わざと1席開けておいたな?
こんなの、参加しない他ない。
「じゃあ俺が行くよ」
「まじか。助かる」
「で、肝心の合コンっていつ?」
「今日の20時から」
「……もっと早く言えよ」
「イエッサァー!」
俺は耳に蓮の大声が残ったまま、午後の授業に参加しショッピングモールで変装用の小道具を買い、その足で合コンへ向かった。
遠くから二人のことを見て、なんで急に男嫌いじゃなくなったのか探る予定だった。
が、その予定は合コン開始早々崩れた。
「で、どうなの?」
「えっと」
二人の席が俺の正面なんて聞いてないぞ!!
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