第三章 聖騎士ハデル
第15話 あたりめじゃねーからな!
「パパ?なんか、あたりめの臭いがする」
ついついエロい動画で一発抜いた後に、
子供とお風呂に入った時に言われたセリフ。
え?おかしいな。
なんて、しどろもどろになった記憶
を思い出した。
あー、もう娘に会えないのかな?
もっと色々楽しい思い出がある筈なのに、
なんで「あたりめ」のエピソード?
もっとあんだろー苦笑
薄れゆく意識の中で、
あー俺は死ぬんだ。
そう思った。
ハサンと魔将軍ザンが
死闘を繰り広げている頃、
二人目の聖騎士が召喚されようとしていた。
冠城 武徳(かぶらぎ たけのり)35歳。
大手ゼネコンに勤める若きビジネスパーソン。
武徳は、後輩と後輩の
彼女と歩いているところに
暴漢に襲われ死んだ。
彼の魂は死して逝くべき場所に行く筈だった。
その時、刻の理を曲げて世界が開ける。
混沌の闇を抜けて、
マーラの世界へまた一人の
聖騎士が召喚された。
被召喚者の名はハサンではなく、ハデル。
元来、同じ時代に二人と生まれ出ることは無い。
がしかし、何の因果か、はたまた奇跡なのか?
聖騎士が又陰我の下に誕生したのである。
召喚者は首長族のメリー。
メリーも又陰我の下にミスを冒した。
武徳も又、凝流同様に
『自己破産』していなかった。
聖騎士の三要素の内一つでも欠けていれば、
聖騎士として召喚されないのが通例の筈。
ところが、武徳のパターンも同じく
聖騎士として召喚されたのであった。
しかし、神の摂理に反した見返りとして、
神の雷をセシア同様にメリーは受け、
自慢の長首は短くなった。
首が短いのは美の欠落。
(とはいえ、ぱっと見超美人になった)
しかしメリーの心は折れなかった。
何故二人目の聖騎士が召喚できたのかを
肌で知っていたから。
一人目の聖騎士ハサンが、
召喚した『この今』死んだのである。
「一人目の聖騎士が死んだ。
アヤカシを根絶やしにするには、
私がやるしかない」
メリーも又両親を、
首長族の里をアヤカシによって殺されていた。
幼いメリーは、生きるために何でもしてきた。
絵描き、靴磨き、洗濯屋、盗人、
立ちんぼ、サクラ、打ち子……。
殺し以外は何でもやった。
売春宿に売られたメリーが、
数年後に客として知り合ったのが
賢者パティーンだった。
賢者が売春宿に行くのかって?
賢者だろうが人の子だろう。
溜まるものは溜まるのさね。
(しかし、首長族の彼女は需要が無かったのでずっとバックヤードで雑務だった)
バックヤードにいたにも関わらず、
パティーンはメリーを見つけた。
そして客としてではなく話し相手として
メリーをいつも指名した。
パティーンはメリーと出会うために、
その宿に通っていたのだ。
賢者パティーンに身請けされたメリーは、
パティーンの元で一通り魔法を修行し覚えた。
そして世界の理と秘伝とされた聖騎士の召喚術さえも会得したのである。
パティーンは晩年、メリーにこう言い遺しこの世を去った。
『7の年に災いと聖騎士が召喚される。
お前が2の月の3の日に聖騎士を召喚するのだ。百年に一度の聖騎士が二人召喚される年。呪いと災に満ちたアヤカシの陰我を屠るのは、二人の聖騎士だ』
でも、聖騎士ハサンは死んだ。
元来、次の聖騎士もハサンと呼ばれる筈。
しかし、初代聖騎士ハサンの従者であり、
実の弟であったハデルの名を
武徳に与えたのである。
ハサンと違い、武徳は35歳。
世間一般では35歳はオジサンかもしれないが、45歳以上の人間から言わせたらまだまだ若い。
メキメキと剣術や魔法も覚え、名を成していくのである。
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