第9話 役満の心

「20を過ぎてからの、

25年なんてあっという間だよね。」

誰かが言った。


当時の私には、分からなかったが

今の私には人生なんて一瞬。

よく分かる気がする。


あっと言う間だね。マジで。


先の自衛官時代も、

つい昨日のような思い出である。


ところが気づいたら、その25年で子供ができて次のステージに進んでいた。


「ついに、俺も親父か!」

「男の子? でかした!」

なんて長男の誕生に喜び、


無我夢中で子育てを手伝い、

初めての公園デビュー、

初めての子連れの旅行、

交通機関で泣き叫ぶ長男に、

戦々恐々となりながら過ごした日々。


数年後に、長女が生まれて、

その年に実父が死んで生と死が

私の前を過ぎていった。


GWには娘の顔を見せに行くね、

なんて言ってる矢先に、

自宅で倒れた。


町内会の人と麻雀を

実家でしていた最中らしかった。


雀卓を囲んでいる最中に、

「頭が痛い」と前のめりに倒れたようだ。


手牌は「役満テンパイ」だった(笑)。


直ぐに救急車が来たが、受け入れる病院が無くて循環器センターで

最後は受け入れてもらった。


治療は出来ないとのこと。

既に助かる見込みは無いと告げられた。


3日して亡くなったけど、

前の日に深夜目の開けない、

意識が戻らない親父と語り合った。


『親父、本当にありがとうございます。』


元自衛官の親父。

温厚な人だった。

子供達には厳しかったけど。


その時……。

親父の目から涙が。


看護婦さんは「よくあることよ」

って言ったけど、


嘘やん。


そして看護婦さんと、伯母さんは言った。


「耳は聞こえてるんだよ」と。


あー。親父、俺はあんたの子で

本当に良かったよ。


なんで、こんな事を思い出しているかと言えば、アヤカシに襲われた村の父親の家の葬儀を旅の途中で見たからだった。


アヤカシは何故人を襲うのか?

第一、ここは魂の世界なのに

死ぬことはあるのか?


この疑問をセシアにぶつけることにした。


セシアは言った。

アヤカシは謎の存在。

アヤカシには意志が無く、

問答無用に


だから聖騎士が必要なんだとのこと、


アヤカシが、マーラに出現したのは

何百年も前の伝承の世界からだとか。


理由も分からない。


しかも歴代の聖騎士でも

完全にアヤカシの出現を

消し去ることは出来なかった。


私にできるのか?

やれんのか?


花はやがて土に還り、芽は再び息吹く。


アヤカシを封印する方法を

見つけよう。

こんな悲しい連鎖を断ち切るために。


次回へ続く

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