第6話 クチビルゲ
「オマエ、クチビルゲみてぇだな」。
私は高校を卒業した後に、自衛隊に入隊した。
その時、配属された部隊の
とある先輩の第一声がそれだった。
クチビルゲ?
なんですか?それ。
でも、バカにされてるのだけは
一瞬で分かった。
しかし、自衛隊の世界では
星(階級)が一つ違えば神様なのである。
私は逆らえなかった。
『町珍! バロンワン』
というヒーローがあって、
その怪人らしく、
クチビルのお化けだと後に気づく。
当時は携帯が出始めで、当然ガラケー。
ネットの機能なんて無かった。
今は、もう存在していない(吸収された)
ツーといえばカーという会社で初契約した。
18歳の頃の話だ。
CMは木琴こと、
渋茶隊のモトキンが唄っていた。
青春だった。酒もタバコも、
女もこの頃に覚えた。
私が20の時、初めて彼女が出来たのも
その頃だった。
今、思い出したんだけど
クチビルゲと言い放った先輩じゃない、
別の先輩が隠れて
俺の彼女と会ってたんだよね。
おかしくねー?
なんか腹立ってきた、今更。
そんな後輩の彼女を奪うような先輩
じゃなかったし、
彼女は私が初めての男だから、
浮気をするような人間じゃないから
疑ってなかった、当時は。
でもありえないよねー。
彼女も、そんな先輩と車でどっかいく?
おいおい、まじかよ。
でもあの時は、信じてたよ。
今も別に何も無かったんだろうなと思ってる。
まー、仮に何かあっても、
もう27年前の話だから、どうでもいいけど。
話を戻そう。
バロンワンは、我々の一つ上の世代の人達が
見ていたヒーローだ。
小学生の子供二人が、
ピンチになると友情パワーで変身するという
当時でも画期的なヒーローだった。
だから、クチビルゲか?オメー?
の先輩の声は、後にかなり傷付いた。
暗に顔に対してイジられたのだ。
人間=ホモ・サピエンスは
認知を進化させて勝ち残った。
数あまたあるホモ種又は
ネアンデルタール人などの
亜種を根絶やしにして、
ホモ・サピエンスは地球の覇者となった。
それは『認知の力』に他ならない。
つまり、私達ホモ・サピエンスは、
『神』を作り上げることで
集団の意思疎通を可能にしたのだ。
結論を言えば、認知とは自覚とも言える。
量子論でも言われることだが、
『認知、認識の無いものは存在しない』
というのが、定説となっている。
ロールプレイングゲームや、
オープンワールドゲームを
したことがある人なら分かるはずだ。
自分の周りしか視野が広がらない。
街は存在しない。人も景色も存在しない。
まさに、我々の認知の世界がそれだ。
だから、クチビルゲと言われて、
拗ねることも、反抗することも、
受け流すことも、
傷付くことも自由であるのだ。
まあ、当時はそんな事知らなかったし、
そんな考えがあるとも知らなかった。
班付の班長(軍曹)からは、
『おめー愛読書MOOだろ?』
(※オカルトや不思議な事を扱う雑誌)
と、言われたのも思い出した(笑)。
また脱線した。話を戻そう。
物事は起こるべくして起こる。
シナリオ通りと言う人もいる。
きっとそうなんだろう。
湧き上がる感情や、
思考すら必然なのかもしれない。
しかし、怒りはただ見つめてすぎるのを待つ。
私達は神として俯瞰して全体を見る。
そして、今どういう選択をするのか?
これこそが自由意志なのだと私は思う。
英雄ハサンとして生きる。
これこそが自覚。
認知の現れ。神として自覚して
全体を見つめて生きる。
どういう結論や出来事が起ころうと、
全てを肯定して生きる。
それは間違いなく大いなる者からの
ギフトであると私は考える。
前置きが長くなった。
もう夜の帳が降りてくる頃。
今日は疲れた。
セシアの家で寝ることにして、
明日出発することとしよう。
セシア? 今日のご飯はなんだい?
私は訪ねた。セシアは言う。
イノシシに似たアヤカシ、
『ドテチン』が保存してあるから、
ドテチン鍋にしようとの事だった。
ドテチン鍋か〜。楽しみだなー。
どんな味がするのかなー。
きっと牡丹鍋のように旨いんだろなー。
なんて思いながらセシアの家へ向かう
ハサンとセシアだった。
次回へ続く
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