第5話 英雄としての自覚
英雄として召喚された者は、
人の時と比べて
3倍のソウルパワーを得るという。
時の理を冒した代償か、
はたまた神々の恩寵なのかは分からない。
しかしあの子供の頃に夢中になった、
『チュー!』
と叫ぶメタルヒーロー
スペースシャリフ バギャンが
必ず陥る空間で、モンスターのパワーは
3倍に跳ね上がった。
あれと恐らく同じ原理なのだろう。
正に聖騎士になると、この空間のように
飛躍的にソウルパワーが上がるのだという。
ちなみに、ソウルパワーとは魂の力。
そのままと言えば、そのままなんだけど、
このマーラの世界は想いの力=心の力が
全てを決めるらしい。
セシアは泣いていた。
大事な鼻を失ったのだから当然だ。
しかし、彼女は泣きじゃくりながら
私に訴えかけてきた。
「このマーラをお救いください」と。
こんなもう若くないおじさんに、
30歳の若い子が(注※40代後半になると30代前半の子は若者なのである)頼るとは。
よし! ひと肌脱ごうじゃないか!
人の世での未練は断ち切って、
ハサンとしてこの世界を生きようじゃないか。
我ながら単純だよね。
私は、人間名:凝流を捨て
聖騎士ハサンとして生きることにした。
私の中でテーマソングが聞こえてきた。
これだ。小さい頃に忘れかけていた
小宇宙が燃える。
そのテーマソングは勿論、
チェイス! バギャンだ。
小さな花を踏みつけられない男に
私はなったのだ。
これこそ、強さは愛だ。
我ながら単純。
気を取り直して
私はセシアにこう述べた。
「君の想いは伝わった。
私はハサン神としてマーラを救う。
それは私の使命なのだ」と。
救世主として目覚めた瞬間。
私の中の小さな消しゴムが、
今大きく動き出した。
その様子を草場の影から見つめる
黒き人影があった。
仮面を被る忍者のような出で立ち。
王の隠密でもあるシローネその人である。
ハサンの目覚めはこの世界を揺るがす
一大事である。
どのくらい一大事なのか例えると、
人間の45歳の男性は大抵、
一子相伝の暗殺拳の使い手
『ポックン豚犬』に憧れている。
あのポックン豚犬の世界に
人生を例えるのだ。
私も会社の20代の子に
ポックン豚犬の『ゲン』VS
何トン1000件の使い手である『シン』で、
ゲンが敗けちゃって身体に7本も
指入れられちゃう話を
熱く語るも響かなかった経験を思い出す。
つまり、救世主として目覚めたゲンは、
一度敗れたシンとの再戦を果たすのだが、
全く敵では無かったのだ。
これが救世主に目覚めているか否か、
自覚があるか、否かに関わるのである。
つまり、自覚こそが
強さであり力なのである。
その自覚とは愛なのだと、
バギャンを通じてハサンは
知っていたのである。
特撮ヒーローは教育番組だ!
かつて「ブイッスリャァァ!」の人は
そう言った。
強さは正しくなければならない。
そして強さは愛なのである。
神として意識して、自覚し、
ハサンとして使命を感じた時点で
強さが変わった。
セシアは聖騎士のみが
装備できるという禁断の剣、
『三鈷剣(さんこけん)』
を渡すのであった。
これからハサンの長い歴史が
始まろうとしていた。
次回へ続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます