ハシワタシ
影神
ヤンチャな男と一匹の猫。
"魂"と"肉体"が完全に離れてしまうと、
あの世では、『死』を指し示す。
だが、稀に。
魂と肉体が不安定な状態下にある場合。
誤ってこちらの世に来てしまう事がある。
それをあの世に戻すのを補助するのが。
私の、"役割"である。
「あれ、、
ここは。何処だ、、?」
真っ赤な橋。
そこに俺は立っていた。
「気付いたか?
意識は、ある様だ。
なら、早い内に帰りなさい。」
ふと横を見ると、知らない奴が立っていた。
そいつは、男だか女だか。
よく分からねえ顔をしていた。
「誰だ、てめえは??」
「私は"ハシワタシ"と呼ばれている者だ。」
「ハシワタシ、だあ??
ってか。ここは何処なんだよ??」
モヤの様な場所で目に見えるのは、
自分の立っている橋に。赤い色をした手摺。
その下を流れる水に、ハシワタシって奴だけ。
ハシワタシ「ここは、君の居た世とこちらの世との、
サカイだ。。
」
「何を言ってやがる。
俺は、、」
俺は、、?
どうしたんだ、、
ニャオッ、、?
「何だ、、?」
ハシワタシ「彼女は帰れと言っている。」
「にゃんころ!!!」
ニャオ。
足元に居た猫を抱き抱える。
ハシワタシ「思い出したか。
君には家族が居ないのか??」
自分の面倒な事から逃げ続け。
好き勝手な事を繰り返し。
家族には、迷惑ばかりかけた。
「家族。。
そんなもんは居ねえさ、、
にゃんころ。
お前は、死んじまったんだな??」
ニャニャ、、
ハシワタシ「そうだ。
だから、向こうへ行く様に言っている。」
「何でにゃんころは、俺の所に。。」
死ぬ時に誰かが案内してくれるって、聞いた事はあったが。
まさか。にゃんころが、、
ハシワタシ「それは、彼女が。
君の事を愛していたからさ。」
「えっ、、」
にゃんころとは、
めんどくせえ奴等から逃げてた時に出逢った。
「ったく、、ダリい」
その日は雨だった。
ニャオッ、、
「ん??
何だお前。。
お前も逃げて来たのか??
いや。お前も。
裏切られたのか、、」
好き勝手やって来た俺の周りには、
どうしようもない奴等しか集まらなかった。
それでも、奴等と馬鹿やってる時が楽しかった。
ある時。
関わっちゃいけねえ奴等に。
仲間がやられちまった。
仲間は、俺の名前を出した挙げ句。
全てを。俺のせいにしやがった。
仲間だと、思ってたのに、、
仲間なんて、要らねえ、、
仲間なんて、、
ニャオ。。
「へへへ、、
くすぐってえじゃねえかよ。。」
にゃんころの瞳の奥は、とても綺麗だった。
ニャァ。
にゃんころは、温かくて。
何故か。涙が止まらなかった、、
「どうして、俺なんかに。。」
ニャァアア??
まるで。会話するかの様に。
にゃんころは鳴いた。
ハシワタシ「それは、君が。
優しく抱き締めてくれたから。
だ、そうだ、、」
「そうか、、
そんな事だけで。。
律儀な奴だ、、
もう少し早く。
お前と。出逢えて、たらな??」
ハシワタシ「その為にも。
早く。戻ると良い。」
「え??」
にゃんころは、腕の中から飛び出した。
ニャォ。
「にゃんころ!!」
ハシワタシ「また。会いましょう?
だ。そうだ。」
「あぁ。。」
にゃんころは、歩いて行く。
「俺は、どうすれば。。」
ハシワタシ「彼女に付いて行くといい。」
「、、ありがとうな??
会わせてくれて。。」
ハシワタシ「全ては君がした事の結果に過ぎない。
礼を言うのであれば。
私ではなく。彼女に言うべきだろう、、」
「あぁ。。」
不器用だった俺に。
にゃんころは、チャンスを与えてくれた。
「もう一度。
頑張ってみるよ、、
だから。また。
俺の所に、来てくれよな??」
ニャア。
だってにゃんころとは、、
また。逢いたかったから。
人間の寿命は、そう長くはない。
何を得て。何を感じたのかは、、
本人にしか分からないのだから。。
ピッ、ピ、、ピ。
「、、馬鹿息子。」
「母ちゃん、、?」
懐かしい顔が。
俺を優しく包んだ。
「ぁぁ、、
こう言う事だったんだな、、」
また。頑張ってみようと思う。
今度は、あまり。
心配を掛けない様に、、
「ありがとう、
にゃんころ。。」
ハシワタシ 影神 @kagegami
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