第10話 4階層
いよいよ4階層探索の日となった。
いつものように打ち合わせを行った。
「本日から4階層となりますが、複数の敵機以外にも気をつけなければならないことがあります。それは、他のマーセナリーです」
「そういえば、今まであったことないですね」
「リンゴさんはすでに知っていると思いますが、1から3階層は、各ギルドの教育に使用されています。午前中は新人教育に使用されています。日時もギルドが調整していて、まず会うことはありません」
「そうすると、ポーターを卒業したらどうすればいいのですか?」
「ポーターを卒業した人は、午後から探索するように、ギルドが日時を調整してくれます。そして、4階層については、キャリアがすぐに満載になるため、スケジュールが細かくなっています。そのため、戦闘に時間がかかり過ぎたり、回収に時間がかかっていると、他のマーセナリーと会うこともあります」
「何か問題があるんですか?」
「ギルドに所属している人達とあったとしても問題はありません。問題があるのは独立した者と出会ってしまった場合です。1〜3階層の事は、機甲都市としても決まり事になっているので、独立した者が探索することはありませんが、4階層からはそうではありません。独立した者が探索する場合、ギルドを通すことはないので、同時刻に複数のグループが探索をしている場合が出てきます」
「近くで戦闘をしているとこちらに弾丸が飛んでくるかもしれませんね」
「それもあります」
「も、ですか?」
「はい。独立した者に悪意があれば、こちらを戦闘不能にし、機体ごと回収されたり、パーツやキャリアごと回収される場合もあります」
「戦闘不能……それは殺されるということですか?」
「はい。証拠があれば機甲都市を追放され、無期懲役となり2度と日のあたる場所に出ることはありません。ですが、証拠がなければ……ということです」
「怖いですね……どうすれば良いんでしょうか?」
「まずは初撃を防ぐことですね。ギルドに緊急通信をしてデータを送れば、それが証拠になりますし、同時刻に探索しているグループに緊急通信が入り、救援に来てもらえます」
「なるほど。初撃を防ぎ、ギルドに緊急通信し、救援が来るまで持ち堪えれば良い訳ですね」
「そうです。しかし、そんなリスクの高いことをする者は、ほとんど居ませんので、必要以上に怖がることはありません。戦闘時や回収時は、レーダーの反応や周囲の警戒をしていれば十分だと思います」
「分かりました。今まで以上に気を引き締めて任務にあたります」
「はい。あとケイタさんには、リフト前に集合した時、私の予備のハンドガンをお渡しします。今日の探索でハンドガンを数丁確保してください。では、行きましょう」
「了解しました。ありがとうございます!」
その後、俺達は準備を整え、4階層へと向かった。
リフトから降りてすぐに、通路が複数に分岐していた。
レーダーの反応や、通路からの戦闘音などに注意しながら、分岐を選び、進んでいく。
しばらく進むと、レーダーに敵の反応が現れた。数は2機だ。
俺は、シールドを構え、戦闘を見守った。
シズクさんとリンゴさんは、ハンドガンで攻撃を開始。
敵は回避行動を取りながら近づいてくる。
敵機も1体はハンドガンを持っているようで、シズクさんもリンゴさんも回避行動を取っている。
近接武器の攻撃範囲に入る前に、ハンドガンを持った敵は倒れた。
そして、近づいてきた敵は、シズクさんが頭部を刎ねて倒した。
俺は、レーダーと周囲の音にも気をつけて、素早く回収作業を行った。
接近してきた方は、損傷が少ない。頭部も拾ってすべて回収。
ハンドガンの方は、頭部と胴体に損傷があったので、腕部と脚部、武器を回収した。
その後も順調に進み、1時間程で、満載となり帰還のためリフトへと向かった。
『帰還する時が、1番危険です。警戒を』
『「了解」』
あと少しというところで、レーダーに敵機ではない複数の反応が現れた。
俺はすぐにシールドを構え、シズクさんとリンゴさんも警戒した。
どうやら向こうのグループも警戒して停止したようだ。
こういう時はどうするのだろうと思っていると、シズクさんが、外部音声で呼びかけた。
「こちらは、ギルド【麒麟】所属のグループです!」
「了解だ! こちらはギルド【朱雀】所属のグループだ!」
「了解です!」
どうやら向こうもギルド所属だったらしい。
こうやって確認するんだな。
『確認はしましたが、一応警戒は解かないように』
『「了解」』
2人は警戒したまま、俺はシールドを構えたまま前進した。
それは向こうのグループも同じようで、お互いに警戒は解かず、すれ違った。
これはなかなか疲れる。
でも慣れていかないとな。
そうして、無事にギルドへと帰還した。
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