第8話 地下AIダンジョン3階層と、相性の悪い人

 ポーター2ヶ月目、いよいよ3階層へと向かう事になった。

 打ち合わせでは、レーダーに敵機の反応があれば、すぐにシールドを構えるように言われたので、気持ちを引き締めて探索に向かった。

 ここでも、武装の回収が主な任務となっている。


 3階層を慎重に進んでいると、早速レーダーに反応があった。

 俺は機体を操縦し、シールドを構えて、全身を守った。

 覗き窓からシズクさんの戦闘を見る。


 シズクさんは、弾丸を、前進しながらジグザクにステップすることで躱していた。


 それをみて俺は唖然とした。

 どうやってタイミングを合わせているのか。

 確か、機体のサポートAIにより、射線予測が見えるらしいけど、タイミングなんて分からないよな?

 今日帰還したら、話を聞いてみよう。


 途中何度か俺にも弾丸が来たが、シールドのおかげで無事にキャリアを満載にすることが出来た。

 シズクさんにシールドを見てもらったが、ボコボコにへこむまで使用出来ると言われた。

 

 俺達は帰還し、いつもの手続きを終えて、個室へ。


「シズクさん、お疲れ様です」


「お疲れ様です」


「あの、聞きたいんですが、弾丸ってどうやって避けているんですか?」


「あぁ、それは、射線予測とタイミングですね」


「タイミングがわかるんですか?」


「私も昔は同じハンドガンを使っていたので、なんとなく分かるんです。確実に避けたい場合は、敵機の指を見ればタイミングが分かりますよ」


 簡単に言ってるけど、なんとなくだけで回避って……それに戦闘しながら敵機の指って、俺には出来そうにないぞ。

 シズクさん、戦闘のセンス高すぎだな。

 説明内容は天才の人のそれだ。

 俺は、シズクさんからシュミレーションルームで機体操作のトレーニングをするといいとアドバイスをもらい、今後の予定を聞いた。



「2週間は3階層でパーツの回収任務を行います。その後4階層に行くのですが、そこからは敵機が複数出現します。複数と言っても2機もしくは3機ですが。ですので、私以外にもう1人参加しますので、よろしくお願いします」


「了解です。顔合わせはいつですか?」


「そうですね……来週から参加してもらいしょう。連携を3階層で確認して、4階層に行く方がいいと思いますので」


「了解しました」



 そして、1週間が経過した。


 今日から、もう1人参加するんだよな。

 いい人だと良いんだけど……。


 俺は、ギルドの個室へと向かい、2人が来るのを待った。

 しばらく待っていると、シズクさんと、支給された制服を着崩した20歳くらいの茶髪で少しチャラそうな見た目の男性が現れた。


「ケイタさん、おはようございます。こちらの方がこれから任務に同行します」


「おはようございます。ポーターの田場湖慧大です。よろしくお願いします」


「ちぃっす。藤堂っす。よろっす」


「……アキヒロ君、ちゃんと挨拶してください」


「シズク先輩がそう言うなら、藤堂明弘トウドウアキヒロっす」


 俺、顔引き攣ってないかな?

 この人と上手くやっていける自信が無いんだけど。


「あ、えっと、アキヒロ君よろしくお願いします」


「あ“!? オッサンが気安く呼ぶんじゃねーよッ」


 えぇ……面倒くさい人かぁ?

 しょうがないか、まぁ俺、新人だしな。


「……藤堂さん、よろしくお願いします」


「おう。それで良いんだよ。しっかり回収しろよ」


「は、はい……あのシズクさんこれか「あ”ッ!? テメー何シズク先輩の名前気安く呼んでんだ!!」」


 ダメだ。

 俺と合わない人だ。

 どうしよ……あ、シズクさんも頭を抱えてる。


「アヒキロ君、その態度だと任務に支障が出るので、代わりの人を用意してもらいますよ」


「えぇ!? いやいや、待ってくださいよ! 物の道理を教えてやってるだけじゃないですか!」


「数ヶ月前は、貴方もポーターをして教育を受けたはずです。それが物の道理とは……ギルドではそんなこと教えてないはずですが……いったい誰に教わったのですか?」


 シズクさんのこんな冷たい表情初めて見た。


「そ、それは、飲み屋で知り合った先輩が……」


「それは誰ですか? このギルドに所属している人ですか?」


「え、いや、その……独立、してる、先輩です」


「そうですか……残念ですが、今回ギルドが貴方に出した依頼は取り消してもらうように申請します。今日は、もう帰っていただいて構いません」


「そんな!? せっかくシズク先輩と一緒の任務楽しみだったのに!」


「私と任務? 楽しみ? ギルドからの依頼は、ケイタさんの教育任務のはずですが? まぁもうどうでも良いのですが、早く帰っていただけませんか」


「ッ!! オッサン! テメーのせいだぞ! クソがッ! 覚えてろよ!!」


 藤堂さんは、そう言って、ドアを蹴飛ばす勢いで、バンッと開いて出ていった。


 えぇ……俺のせいって何で?

 若い子怖い。


「ケイタさん、申し訳ありません。今日の任務は取り止めにしましょう。ギルドに申請しなければいけなくなりましたので」


「いえいえ! シズクさんは何も悪くないので謝らないでください。俺は大丈夫ですので。ちょっと若い子怖いって思いましたけど……」


「そうですね……どうやら変な人と知り合ってしまったみたいです。前は、あんな子じゃなかったのですが。せっかくなので話しておきますが、基本的にこのギルドでは上下関係は気にしていません。なので、合同の任務にあたる時には、みんな下の名前で呼び合っています。その時は敬称も敬語も使いません。何かあった時にすぐに伝えなければなりませんので」


「そう、なんですね」


「はい。ただ今は、ポーターという教育期間中ということと、私からすればケイタさんは歳上ですし、ケイタさんからすれば私は先輩になる訳ですから、敬語と敬称をなくす必要はないと思っていました」


「俺も、いきなり呼び捨てにして敬語なしで、と言われたら戸惑っていたと思います」


「予定では、3ヶ月目の最後の週で、その辺りの説明と教育をしていく予定だったんです」


「確かに、その頃になれば、ポーターから卒業を意識していかなければいけない時期になりますね」


「そういうことです。卒業後は、自分でポーターギルドから人を雇って、1階層から3階層での任務を受けることになるんです。それに慣れてきた頃に、藤堂くんのようにギルドから依頼されて新人さんの教育と連携、複数機体との戦闘を経験していく事になります」

 

「そういうシステムになっていたんですね」


「はい。この辺りのことも3ヶ月の最後に教えることになっているんですが……。あ、長々とすみません。私はこれからギルドへ報告と申請をしてきます」


「いえいえ。説明していただき、ありがとうございました。次はいつここに来れば良いですか?」


「そうですね……ギルドから連絡が来たら、ケイタさんに連絡を入れますので、それまでお待ちください」


「了解しました。それでは、今日のところは帰りますね」


 俺達は、お互いに苦笑いしながら別れた。


 うーん、急にやることがなくなったな。

 あ、シュミレーションルーム行ってみよう。


 俺は、ギルドの受付で、シュミレーションルームの使用料を支払い、トレーニングをする事にした。




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