美少女妖精に転生した俺は顔のいい仲間と傭兵ライフを謳歌する!
朔(ついたち)
転生編
第1話 転生!夜の山
雪の降る朝。俺は高校への通学路を自転車で走っていた。
この地域は温暖な気候であるから雪が降るのは非常に珍しいことである。ましてや薄くではあるが雪が積もるのはこの17年の人生の中で初めての経験だ。
そもそも雪に触れるのは親友と行ったスキー以来だ。当時健在だった親友の姿と思い出を振り返っていると突如として体に衝撃が走る。どうやら交差点を曲がろうとしたところで雪にハンドルをとられて転んでしまったようだった。交差点の中央に自分の自転車が転がっているのが見える。まだ痛みが体に残るが早く起き上がって自転車を回収しなければ危ないだろう。
「痛っ…雪道走るのは慣れてないし気を付けないとな。」
体を動かすと余計に痛む。痛みをこらえながら自転車を起こそうとしていると、けたたましいクラクションの音とともに交差点に一台の車が突っ込んできた。運転手は青ざめた顔でハンドルを握っているがどうやら操作がきかず止まれないようだ。
雪道での運転に慣れていないのは自分だけではないらしい。
間近に迫るトラックを前になす術もない俺はドガッという鈍い音とともに吹っ飛ばされる。
雪とともに宙に舞う体が頭を下にして落下する。地面に頭をぶつけたと同時にそこで俺の意識は途切れた。
目が覚めると見知らぬ森に俺は立っていた。周囲を見渡すと木々が生い茂っており薄暗く不気味である。周りに街灯などの明かりはなく、暗闇に包まれた森の中に一人でいることのなんと心許ないことだろう。唯一明かりといえば夜空を見上げると木々の葉の隙間から満月が見える。確か昨夜は新月であったはずだが……。
……いや、他にもっと疑問に思う点があるだろう。
まずここがどこなのかという話だ。周囲に見えるのは草木ばかりで見覚えのあるものは何一つない。草木に関心があればここが日本かどうか位は分かるのかもしれない。分かったところでこの状況が変わるわけでもなさそうだが。
次に自分が何故森の中にいるのかという話だ。俺は登校中に街中で車に轢かれたはずだ。仮に生きていたとして目が覚めるならどこかの病院だろう。危険な夜の森に一人で放り出されているのはどう考えてもおかしい。
そういえば死んでもおかしくないような怪我をしたはずなのに体のどこも痛くない。体の状態を確認したいが、夜の薄暗い森のなかではあまりよく見えない。せめて開けた場所に出れば月明かりを頼りに確認できそうだが近くにないだろうか。
そう思い、辺りを見渡してみると少し離れた場所に湖を見つけることができた。湖ならば木々に月の光を遮られることもないし、さらには水面に映った自身の姿を確認することができるだろう。俺はとりあえず湖へと向かうことにした。
草木をかき分けながら湖を目指す。少し歩きにくい気がするが自分は今どのような格好をしているのだろうか。そういえば気になることがもう一つある。なんだか視界がいつもより低い気がするのだ。服装はともかく視界が低いとはどういう事だろうか。そんなことを考えているうちに湖に着いた。目論見通り湖は開けた場所になっていて自分の姿を確認できそうだった。湖は暗く、さらには凪いでいてまるで一枚の大きな銅鏡のようだ。俺は早速湖に近づき水面をのぞき込んだ。
月明かりに照らされて湖に映し出されたのは見知らぬ少女の姿だった。少女の明度の高い水色の髪は肩甲骨の辺りまで伸びていて、その瞳も同じく水色をしていた。さらに少女は白色の浴衣を身にまとっており極め付きには背中に羽がついていた。
「誰だこれ!?」
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