君に肖る__鞏幽君。
ネクラギ。
第1話 『剰え』−Amatsusae−
真実は ❛ ひとつ ❜ らしい
でも『 現実では嘘を突き通せば真実になる。』
現実から逃れる絵描きの綺麗事コレクションの
いわゆる「イタイ厨二病フレーズ」だ。
本日も普段通りにアートスクールの
午前の部をサボり大通りを音楽でも聴きながら
不揃いの間隔で歩いていると物騒に
『本当に悪いと思ってるんですか!?』
『二度目起こされたら困るんですよ!!』
「すみません。以後気をつけます。」
車での交通事故であろう現場、
パトカーが2台並んでいる。
20代あたりの怒鳴る男性と
背中にサラリーマンと記していそうなおじさん。
そして小学生が外で物を観察するときに用いる
【探検ボード】を使っているかの様な
姿勢で双方を落ち着かせようと
スラッと高身長のシャツ姿の似合う
警察の方だと考えられる人物が話し合っている。
謝り倒しているおじさんは
たぶんタクシードライバーなのだろう。
家族が居るならこの事後が大変そうだなと。
様子をみている限りはおじさん側が
この事故の加害者側になるのだろう。
この先、どうやって我が家に帰るのだろうか?
《 誰だってミスは有る 》というのは
前向きなアドバイスにも成りゆるが、
相手がいる場合は後戻り出来無い程までに
本人は追い詰められるだろう。
『〔なんともいえない感情。〕』
それは唐突に襲いかかるが
性格によっては途中で諦める者もいる。
だが恐れない者も居る。
その感情とは違った『独り』という
捻くれた感情を恐れて活きる者。
それがこの物語の主役『鞏幽−kuyuu』
漫画並みのぶっ壊れ性能だ。
『でもそれは本当の鞏幽くんの力ではない。』
〚【音が有る限り鞏幽は鞏幽で在り続ける】〛
○*・……………………………………………::…::
『なんで、俺が訊ねやなあかんねん』
流石に嫌なので尖るように拒否する。
『だってここの家の犬最近みかけないんだもん』
『鞏幽くんは心配じゃないんだぁ』
彼は自分の母と同じ嫌味の感じる笑みをした。
『俺だって心配だけど訊ねる程?』
『確かにそうだけど………、』
なんとか急な事態は免れたみたいだ。
犬と猫は苦手だが画面越しに眺めるぶんには
とても好きな方だ。
テレビで動物特集の番組だとやはり
バラエティ番組に変えてしまうのだが………
(やはり少し見辛いな、)
あえてしているとはいえ前髪で眼が隠れる程
髪を伸ばしているため周りの人の顔が見え辛い。
『あ!? おい、鞏幽!』
活発で元気を取り繕っている様な声が
聞こえた、自分にとって一番の優れ部分だ。
『おまえ、彼女できてたなら言えよ』
唐突に襲い来る無邪気さが何故か楽しかった。
突然の話題変更にはあまり覚えが無かったので
『なんでもないよ 意味はあるけどさ、』
避けたつもりだった。
だが、[意味はあるけど]と何の意味なのか
自分もさっぱり分からない事を言ってしまった。
自分には心に穴が開いている。
具体的には『100円均一点の土管のミニチュア』で形抜かれた程の大きさの穴だ。
犬は鳴かなかった。
彼も反応を示さなかった。
君に肖る__鞏幽君。 ネクラギ。 @neclagi_Guna
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