第37話 大地の退院
翌日、幸雄が田村へ何度か連絡をとったが、取材やテレビ出演等で連絡がとれなかったため、田村が大地の自宅へ連絡を入れたのは、夜の10時を過ぎていた。電話口にはひとみの声がした。
「夜分、失礼します。田村と申します。何度か電話を入れて頂いたのに、連絡が遅くなりまして申し訳ございませんでした。ところで、その後、大地君の容態はいかがでしょうか?」と田村は聞くと、
「実は奇跡的に大地は助かりました」とひとみが言うと、
「本当に大地君は助かったのですか?」と信じられない気持ちで、田村は確認をしたのだ。
「はい、いろいろとご心配をお掛け致しました」
「いえ、でも、ほんとうに良かったです」
「ただ一つ、気になったことがありまして」とひとみは不安そうに言った。
「何かあったのですか?」と田村は尋ねると、
「昨日、田村さんが最後にホームランを打った後に、大地の意識が戻ったのですが、その時、大地が夢で田村さんにホームランを打ってくれるように約束をしたと言ったのです」
それをひとみから聞いた田村は非常に驚き、正直に、
「実は、私も以前に大地君が見た同じ夢を見たのです。その時に、私は確かに大地君と約束をしました。私がホームランを打って、一番になるということです。約束が守れて良かったです。大地君が退院されたら、また会おうねと伝えて下さい」
「そんなことがあったのですか? 田村さんと大地の話が偶然な事だったかもしれませんが、田村さんが大地の約束を守って頂いたことに大変感謝をしています。
大地が退院をしましたら、必ず連絡を致します」
とひとみが言い、田村は電話を切った。
そして、大地は二週間後に奇跡的に退院することになったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます