第26話 約束のプレゼント

     (実況中継)


「現在、4対1でパイレーツがリードしています。5回裏、2アウト一塁で田村がバッターボックスに入りました。カウントは2‐3となり、ピッチャー野口投げました。田村、打ちました。打球はライト方向へ飛んでいます。ライトは完全に諦めました。田村のホームラン、2ランホームランです。4対3、1点差となりました。 

田村、7試合ぶりのホームラン、第16号です」


「大地、田村選手が、ホームランを打ってくれたね」とひとみが言うと、


「やったー。タムがホームランを打ったよ」と大地は立ち上がって手を叩いた。




     (9回裏、ジャガーズの攻撃)


「タムは、もう打たないの?」と大地が幸雄に聞いた。


「田村選手は5番目に打つので、今日は廻ってこないかもしれないな」

と幸雄が言った。


「もう一回、タムのホームランが見たかったのに」

と大地はすねた口調で言ったため、


「大地、田村選手は、さっきホームランを打ってくれたでしょ。そんな事は言わないの。分かった?」とひとみが言った。


「ごめんなさい」と大地は謝った。


 


     (実況中継)


「1点差で最終回、ジャガーズの攻撃です。9回裏は運良く1番の風間からです」


「風間、セーフティバンドです。打球はサード方向へ、サードが前進、右手で掴んでファーストへ投げました。どちらが早いか? セーフ、セーフです。風間の足が間一髪速かった。次の打席は2番の中谷、ここで犠牲バンドでしょうか、川籐さん?」


「そうですね、バンドで送って同点にもっていくでしょうね」


「中谷、初球をバンドです。ピッチャー2塁をあきらめ1塁へ投げて、1アウト2塁です。3番の高木がバッターボックスへ入りました。高木、初球を打ちました。打球はレフト方向へ飛んでいます。レフト前に落ちるのか? レフト、前進をして滑り込んでいます。レフトはシングルキャッチで、右手を上げています。神田のファインプレーです。2アウト2塁となりました。ここで主砲のクルーズです。クルーズにヒットが出れば同点となりますが、何とかここで打って欲しいところですね」と江川が言った。


「恐らく敬遠ではないですか?」と川籐が言うと、


「あ、やはり川籐さんが言われた通り、キャッチャーが立ち上がっています。完全にボールを外してフォアボールにしました。2アウト1塁、2塁で田村の登場です。 田村は、第2打席でホームランを打ちましたが、第3、4打席は凡退しています。ほとんどのファンが田村のヒットを期待していることでしょう。田村のここ1ヶ月の打率は、4割6分という驚異的な数字です。田村、打席に入りました。ピッチャー野口、第1球目を投げました。ストライクです。第2球目は高めのボール球を空振りです。田村、2ストライクと追い込まれています。野口、第3球目を投げました。内角高めに入り、ボールです。次が勝負球ですね、川籐さん」


「野口は必ず勝負をしてくるでしょうね」と川籐が言った。


「野口、第4球目を投げました。打球はレフト方向へ飛んでいます。レフトの三上、バックしています。ジャンプをして三上がフェンスに激突。掴んでいるのか? 

いや、打球はスタンドへ入っています。ホームラン、サヨナラ3ランホームランです。 田村、やってくれました。すごいですね、川籐さん」


   

川籐は泣いていたため、声がでなかったのだ。




 

「大地、田村選手が2回もホームランを打ってくれたよ」と幸雄が言うと、


「うん、見てたよ。タムはすごいね」と大地は興奮気味に言った。



幸雄はひとみに、

「大地の誕生日にこんな最高のプレゼントをもらって幸せだな」と興奮状態で言った。


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