第20話 大地への嬉しい報告
翌日、大地の両親は、7月4日の件で主治医の阿部に相談することにした。
「大地君の様態は、以前に比べるとだいぶ良くなってきていますので、外泊許可は出せます。しかし、村山さんが言われたように、球場となると話は別です。一番の原因は、感染を恐れているからなのです。ただ、球場といいいましても完全個室になっているような特別なところがあれば、話は別ですが、そのような球場は私が知る限り、ほとんどないと思われますので」と言った。
「分かりました。今回は残念ですが、諦めることにします」
と幸雄は辛そうに言った。
二日後、田村はナイターが終了してから、22時頃に村山の自宅へ電話を入れた。
「夜分に申し訳ございません。田村と申します」
「ジャガーズの田村さんですか?」とひとみが聞いたため、
「はい田村です。ところで、大地君の具合はいかがですか?」
「おかげさまで、今は安定しています。それから、連絡が遅れましたが、先日、野球のチケットを送って頂き、ありがとうございました」とひとみが言った。
「では、ご家族で試合を見に来て頂けるのですか?」と田村が聞くと、
ひとみは医師に言われたことをそのまま話し、その結果、球場へ行くことができないと伝えたのである。
そして、田村が大地へ送った手紙は、大地が球場へ行けない可能性が大きかったため、ひとみはまだ見せていないということであった。
「先程の件ですが、私が送ったチケットはボックス席で押さえています。つまり、ご家族だけで入っていただける個室タイプになっていますが、だめでしょうか?」と田村は尋ねた。
「でも、球場にそのような席があるのでしょうか?」とひとみが聞くと、
「はい、一部の席だけあるのです」と田村が答えた。
「ありがとうございます。まもなくすると、主人が帰ってくると思いますので、すぐに話したいと思います。明日、大地に嬉しい報告ができそうです」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます