short short Love Story
お銀
第1話 初めての恋
母が、よく恋愛ドラマを見ながら泣いていた。
私は、愛だとか恋だとかがよく分からない。
まるで、
すごーく遠い世界のおとぎ話のような感覚だ。
恋愛漫画はよく読むし、友達の恋バナを聞いて羨ましいなーとも思う。
知識だって……最低限の事は知っている、ごく普通の中学生2年生だって思ってる。
「あかりー!今日学校休みなのー?起きなさーい。お父さんもお母さん今日朝から仕事なんだから、早くご飯食べちゃってー!」
「もう起きてるよー…。今着替えてるところー。」
なーんて軽く嘘をついて、モゾモゾと芋虫のように布団から出た。
「制服、制服……あ、今日ジャージ登校じゃん。ラッキー」
女子はスカート、男子はスラックスって、多様性のこの時代に……。年中ジャージ投稿を希望します!
……なんて考えながら、リビングに到着。
「えー、ご飯できてるんじゃなかったのー?」
「おかず置いてあるでしょ!お味噌汁とご飯くらい自分でよそってちょうだい!もう中学生のお姉さんでしょ?」
と、出勤準備のために鏡とにらめっこをしている母から一喝。
「はいはい、自分でやりますよー。」
「あ、そういえば昔近くに住んでた高峰さん、覚えてるか?また転勤で、こっちに戻ってきたんだよ。確かあかりと同じくらいの子いたよな?」
父が新聞を見ながら、恐らく私と母に話しかけてきた。
「あらそうなのー?! やだぁ嬉しい!アキちゃんママとお母さん仲良しだったのよー!忘れるわけないじゃない!また近くに住むのかしら?!あ!噂をすれば、アキちゃんママからLINEだわ!」
普段からハイテンションの母は余程嬉しかったのか、化粧の手を止めてLINEを始めた。
「アキちゃんかー……。何年ぶりだろう、7年くらいぶりかな?」
アキちゃんは、近所に住んでいた子で、小学校入学の直前にお父さんの転勤が決まって、引っ越していっちゃった。毎日のように私達は遊んでいた。お母さん同士が仲良かったのもあって、気がついたらいつも一緒に遊んでた。色白でお人形さんみたいな可愛い子だったし、大好きな大好きなお友達だった。
「私もアキちゃんに会いたいなー……。お母さん!アキちゃんに会いたいから、おうち分かったらおしえてねー!絶対可愛い子になってるよねー!」
「え?!あ……まぁ、分かったら教えてあげるね?けど、可愛い子?……ん? あらこんな時間!お母さんもう行くから!ちゃんと食器水につけてから学校行くのよ!行ってきまーす!」
……あれ?お母さんの反応なんかへんぢゃなかった?
「あかり、遊んでも良いけど、あんまり失礼なこと言うなよ、年頃の男の子に可愛いは、ダメだとお父さんも思うぞ。お前もかっこいいより、可愛いと言われた方が嬉しいだろ?小さい頃のアキちゃんは、可愛かったけどな。お父さんももう行くから、鍵しっかり頼むぞ。行ってきまーす」
え???、アキちゃんて男の子だったのー?!
あんなに可愛い顔で、髪も長かったし……。
あれ?お風呂も一緒に入った事あったし、何回もお泊まりしてたけど……全然気づかなかったよー……。
「あ、やばっ、遅刻しちゃう!」
ぼーっと思い出に浸っていたらギリギリの時間に。食器を下げて水につけることもせず、鍵をかけることもすっかり忘れて、私は慌てて家を出た。
「……アカリちゃん!カギしめた??」
「え?あっ忘れてた!」
振り返ると、どこか懐かしい色白でお人形のような顔の……男の子が立っていた。
「……アキちゃん?」
「覚えててくれた。うん、久しぶり。」
声変わりで少し低い声、私よりも高い背丈。だけど、小さい頃大好きだったアキちゃん。……あれ?胸がキューっと締め付けられて……顔が熱い。
これはもしかして……。
fin.
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