あなたって――。

久納 一湖

第1話

 だって知ってる。

 本当は奥さんと別れる気なんて、ないってこと。


 ふとももの裏側に、あなたの熱い手が添えられる。あなたが顔をうずめ、膨らみに舌の腹を這わすと、あたしは抵抗できずに反応してしまう。


 抵抗? 受け入れればいいだけなのに。それを素直にできないのは、その舌を、ほかの女にも這わせていることを知っているから。


 あなたは明日、家に帰って奥さんを抱くんでしょう。

 あたしを絆して熱を注いでいるのは、あたしが抵抗できないからだって、わかっているからでしょう。


 あなたから、離れられないって、わかっているからでしょう。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る