久遠寺暁(くおんじ あきら)の魔法留学
三村小稲
第1話
匠が一族の跡取りとして光の中にいることに対して、妹の
それに暁は匠のように快活ではなく、学校でもこれといって目立たず、友達もなく、化学部に所属して放課後は手作り石鹸を作る実験をしたり、ぶどうを発酵させたり、シャツの黄ばみを落とす実験など独特な興味の持ち方で活動していて、その様子がまた一層彼女を奇妙な存在にしていた。
けれど二人は互いの相違点を周囲から引き比べられようとも仲の悪いことはなく、ただ単純に「お互いの持つ特性の違い」を認め合っていた。
陰陽でいえば、陰が暁、陽が匠。光と影なら、光は匠で影は暁。夏と冬なら、匠が夏で暁が冬。それが久遠寺家の双子だった。
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久遠寺家は
久遠寺家の成り立ちと直系の子孫のみが持つ能力は、
神社はちょっと珍しい
それは彼らの持つ「能力」が人々を捉えて離さないのであって、だからこそ久遠寺家が名門であり続ける理由のひとつだった。
久遠寺匠は所謂「家業」であるところの神社の後継者として、幼いころから英才教育を施されてきた。
神社の跡取りだからといって一言で「神主」「
彼ら一族は神社を守り神を祀るだけではなく、「神と通じる力」即ち「神通力」を有する者たちであり、その力で表舞台には決して出ないが政治や経済を動かしてきた。時として歴史を動かすような大きな事件の裏側に関わっていたこともある。が、その「力」はあくまでも「神の力」であって鬼や魔物を
この国の数多の神々と接触するのだから、その身にも心にも、暮らしにも汚れがあってはならない。匠が仮にミュージシャンやユーチューバーを目指すだとかいう夢を持ったとしても、許されることはなく、「絶対に」久遠寺家を継がなければならない。それが彼のあらかじめ決められている人生だった。
といっても匠はその運命に異議を唱えることはなく、この家に生まれたのだから当然のこととすべてを受け入れ、むしろ疑問は感じてはいなかった。18歳の誕生日を迎えるまでは。
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