かぜひき
@Suzaku_Fuuse
はじめまして(1)
身長は少し小柄で僕より小さい君。
明るくて時々浮かべる弱々しい笑顔と、風邪で苦しむ君の表情が愛おしくて仕方がなかった。ここだけの話、僕は君のその顔を独り占めしたくて保健委員に立候補したんだ。
休みがちの僕と君。
愛される君と愛されない僕。
弱い君と弱い僕。
4月、 朝学校に行く前に必ずと言っていいほど体調を崩す貧弱な精神と肉体を持つ俺は案の定入学式の朝も体調を崩し遅刻した。
楽しみにしている家族などいないのでいっそのこと欠席してしまおうか、そんな考えがよぎったが、滑り出しが悪いと幸先も悪いのではという考えの奴隷となった俺はゾンビのような生気のない青白い表情を浮かべて学校へ行っていた。
鉛のように固く重い体を引きずりながらやっとのことで学校についたとき、まだ講堂では式典が行われていた。この中を1人、突き進んでゆくのかと思うと恐怖と動機の乱れに襲われていた。やっぱり帰ってしまおうか、そんな事を考えながら”入学式”と書かれた看板を睨み扉の前に佇んでいた。どれくらいたったのだろう。いつの間にか俺の横に小さな人が不思議そうな目をしながらこちらを見ていた。小さな顔に合わない大きな真っ白いマスクをした小さい人は引きこもりがちな僕が心配をしてしまうくらいには青白く、細かった。男子校であるこの学校にいるはずのない女子だと言われても納得してしまいそうな華奢な肩に、細くて色素の薄いさらさらの髪の毛、透き通ったぴー玉のような美しい彼の瞳はあまりにも浮世離れしていて、俺は割と本気でやっと天へ誘う正体のお声がかけられるのだと一瞬感極まってしまうほどに綺麗だった。
「もしかして君”も”新入生??」
儚い天使は明るくてよく通る声でそういった。
あまりの驚きに声も出ない俺は今朝の体調の悪さなど一切思い出せず、彼がなんと言っているか飲み込めなかった。
―――そうだよ、君も?
反応のない俺を心配そうに低めの視点から覗き込んでくる彼を見て半強制的に現実に引き戻された俺は、声にならない声でうなずきながら返事をした。届いてないだろう。天使を前にしても俺には誰かと関わることなんてできない。そう思って俯いた俺の服の裾を引っ張りながら言った
「良かった。話しかけるの緊張しちゃった。僕も新入生なんだよね、遅刻しちゃった。もしよかったら一緒に講堂に入ってもらえない?」
否定する理由なんてなかった。声を拾ってくれたと捉えて良いのだろうか、届いたのだろうか。
恋をしたことがない俺にはあまりにも唐突に湧き上がる気持ちの名前もわからなかったけれどただ明確に浮かんだのは、もし彼がこの世のものなら手に入れたい、其の隣りにいるのは自分であらねばという烏滸がましい考えだった。
彼の美しい瞳に醜い己をうつしても許されるだろうか。
かぜひき @Suzaku_Fuuse
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