ゾンビになった私はスキル"悪食"で成り上がる‼️
白鷺雨月
第1話ゾンビになる。
まず初めに覚えたのは強烈な餓えと渇きだった。
手当たり次第に手につかめるものは口に入れた。
そうすると時々、舌にまとわりつくようなえもいわれぬ感覚を覚えた。
私は味覚と触覚を手に入れた。
渇きも餓えも無くならない。
真っ暗な中で私はもがくように手をふり、その中につかめたものを口にいれる。
もしゃもしゃむしゃむしゃと口に入れて、飲み込む。
ほとんど不味いものだったが、ときおり温かくて、ねっとりとしていて、とろけるような美味しいものが口に入る。
できるならこれだけを口にしていたい。
「キャーッ!!」
「やめろっー!!」
「ぐえっ……」
耳が何かを感じる。
私は音を覚えた。
この音がしたあと、あのとんでもなくうまいものが口にいれることができた。
私はできるだけこの音がでるものに掴みかかり、動かないようにしてから口にするようにした。
そのものは強く握ると音をださなくなる。
そしてあのとんでもなく美味なものになるのだ。それは餓えと渇きを一番いやしてくれるものだった。
何度かそれを口にいれると真っ暗な視界が変化した。
暗闇から色とりどりの世界に変わった。
視覚を手に入れてのだ。
そうなるとあのとんでもないうまい物を手に入れるのが容易になった。
あの耳が痛くなるような音を発するものを見つけやすくなった。
私はそればかりを食べるようにした。
そうするとなんだか頭がすっきりしてきた。
ぼんやりとした思考がくっきりとしてくる。
私はそのうまいものが口にだす音を言語だと理解できた。
言語を理解すると狩りがやりやすい。
あの音を出すものは人間というものだった。
その人間の中でも女と呼ばれるものは柔らかくて食べやすい。子供と呼ばれるものもいい。小さくて食べやすい。
大人の男は駄目だ。筋張っていてかたくて、不味い。ただ餓えをまぎらわせることができるなら、男も食べた。
ある男を食べた時、頭の中で声がこだました。
それは女の声だった。
種族はアンデッドとなります。
アンデッドレベル1。
頭の中で女がそう語る。
まあいい、そんなのはあとまわしだ。
人間の肉を食べてもすぐにまた飢餓感が襲ってくる。
それを満たすために私は人間を襲う。
そして食らうのだ。
またあの女の声が頭の中に響く。
体が強くなった気がする。それに人間が話す言葉を自分も使えるようになった。
森に隠れて人間を誘きだし、補食できるようになった。
そして、村というものが存在することを知った。
そこには人間が大勢いるという。
その村はドミンゴ村と呼ばれていた。
前に捕まえた人間がいうには百名ほどの人間が住む小さな村だということだった。
闇夜にまぎれて、その村に入る。
潜入して最初に口にしたのは、お腹の大きな女だった。
こいつはお得だった。
お腹にもう一人人間がいたからだ。
たらふく食べた私は一眠りした。
私を見つけた男がナイフを持って襲いかかる。
そのナイフを持つ手をつかむとその男は悲鳴をあげた。
私はそいつも食べた。
固くて筋張っていたが、
またまたあの女の声だ。
なぜ頭の中で声がするのがわからないが、この
男がもっていたナイフを使うと簡単に人間は動かなくなる。
狩りがはかどるというものだ。
それにゾンビレベルが5になった。
それからしばらく私はドミンゴ村にいつくことにした。村の人間をあらかた食べ尽くしたとき、私の前にある人間があらわれた。
そいつは長剣を持ち、その切っ先を私に向ける。
「我が名は護衛騎士マリアンヌ。平穏を脅かすアンデッドを覚悟せよ」
その銀の髪をした女は言った。
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