最終話◉おれは闇メン

最終話

◉おれは闇メン


 近頃『ラッキーボーイ』に呼ばれる回数が減った。常連の誰かに嫌われちゃったかな?だとしたら工藤かな?そんなことを想像した。


 今は卓割れ中でお客さんはいないし従業員には買い物に行って貰ってるからオーナーと2人きりだったので椎名はレジに置いてあるシフト表を見た。すると最近呼ばれる回数が減ったのがなんでなのか納得した。知らぬ間に新人が入っていたのだ。それも女の子。聞くと麻雀も打てるらしい。それじゃあ高い給料はらって闇メン呼ぶよりいいわ。


 

「椎名くんゴメンねえ。今は人が足りてるしそれに…」

「それに?」

「この建物は老朽化が進んでて、もうあと2ヶ月後には取り壊しなんだ」

「えっ!ていうか、取り壊しなのに新人雇ったの?」

「まだ、移転するかもしれないし、すごい可愛い子なんだよ。そんな子が突然履歴書持ってきたら雇わないオーナーとかは居ないだろう」

 椎名は履歴書の写真を見せてもらった。

 アイドルみたいに可愛い子だった。これは雇って当たり前だ。下心とかそういうのがなくても普通に採用してしまうだろう。(これは看板娘になるぞ)と思ったはずだ。

「こりゃあ可愛いや。花岡ユカリ?名前までアイドルみたいじゃないか」

「身長も高くて目立つんだよ。性格もいい子でさ」

「なら、閉店じゃなくて移転にしたい所ですね」

「だといいけど、まだ移転する先が見つからなくてね。まあ、なるようにしかならんさ…そうそう、今日来たらしばらく渡邉さんとこへの依頼をする予定はないから…これ、椎名くんに私からのプレゼント」


 そう言うと日吉さんはポケットからキーホルダーを取り出した。


「ダイヤ牌の赤伍萬で作ったキーホルダー。一緒にここで働いてくれたお礼に作ってみたんだ。良かったら貰ってくれないか」


『伍』という文字には一文字で『仲間』という意味がある。前職が国語教師だった日吉オーナーはそう言った意味を知っていてこの牌を選んだのだろう。


「嬉しいです。ありがとうございます。おれ、伍萬って好きなんで。なぜかこれだけニンベンがあるのがオシャレじゃないですか」


 するとカツンカツンカツンと階段を上がる人の足音がする。


「おっと、誰か来たな。椎名くん、今日も超一流の仕事を頼むよ」



「任せてください。おれは闇メンですから」





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