第25話◉追加ポン

25話

◉追加ポン


 この日の椎名の麻雀はすごかった。特に強烈だったのはこの仕掛け。


 親でポンポンと仕掛けてこんな手。


四伍11999(伍伍伍赤)(中中中)

ドラは9


 ポン跨ぎのいい待ちとは言え読める相手から見たら染めを警戒しそうな切りになっていたので三-六は出そうな牌ではなかった。それに加えて工藤が5巡目に六を捨てておりその後字牌が出てきたことがかなり引っかかる。普通なら安全牌残してまで先に捨てるような牌じゃない。そう、例えば三三六や三三三六から捨てた先切りなんじゃないか?

(でもまあツモればいいかー)で仕掛けた満貫だ。するとここで1が打たれた。


「ポン」


打9

 これが椎名流奥義!トイトイ偽装の追加ポンだ。

 これを見たらマンズホンイツが違うことが判明しトイトイが本命になる。

 中を鳴いているとは言え多分トイトイだろう。そして親の中トイトイ赤には絶対に振り込めない。それにだけは当たらない牌を探すしかないと考え工藤が選択する牌は…?


打三


「ロン!」

「えっ」

 そう、しっかり抑えていた三切りだ。

 工藤が抱えていると予想し、その工藤が降りや迂回を選択するであろう圧力を与えて本来出ない牌を引き出す。それが椎名の仕掛けだった。


 韋駄天のシーナは仕掛けの天才。彼は天才仕掛け師として後の世に名を残すことになるのだが、その代名詞とも言える技がこの『追加ポン』という技となるのであったが、この時はまだ誰も知るよしはないーーー。



ー8時間経過ー


「ふう、やっとリベンジ出来たぜ」

「あなた強いわねえ。またやりましょうよ」

「蘭さんでしたっけ。機会があれば。今日は楽しかったです」

「私も、楽しかったわ。また来てね、私は神戸蘭(かんべらん)」

「椎名(しいな)良祐(りょうすけ)です」


 工藤は旗色が悪くなったと見るや勝ちを溶かす前に途中で帰ったが、蘭と椎名は8時間ぶっ通しで麻雀をしていた。長いと思うかもしれないが、8時間など麻雀をしていればすぐなのだ。


 工藤も倒し、蘭にも勝ち、満足いく戦績で凱旋する椎名なのであった。

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