第7話◉爪
7話
◉爪
おれは麻雀は強い方だと思ってた。自分より強いやつなんてそうは居ないだろって。どこか慢心してた。まさか、いや、まさかってのも変だけど。こんな美女に、圧倒的な力量差を見せつけられるとは思ってもなかった。いや、今美女は関係ないけど。
ウェイトレスという仕事は観察力が必要だと聞いた事がある。お客様が皿を下げて欲しいと思っていることや、食べ終えてデザートを出して欲しいとか。コーヒー飲みたいとか紅茶がいいとか。見てるだけでわかる事があるんだと。母が昔そう言っていた。母は昔、ホテルの中にあるレストランでウェイトレスとして働いていたのだ。
(これがウェイトレスの観察力か。にしてもたいした勝負師だ。③だって安全とは言い切れないというのに)
渡邉の捨て牌は123の三色の可能性を臭わせており。③はワンチャンスであっても危険牌であったし、実際に渡邉はカン二待ちの123の三色なのである。
大きくリードされた椎名だったが、椎名は落ち着いていた。
(まだ開局したばかり、ここで慌てていたら間違いなく落される。落ち着け)
椎名は気付いていたのだ。この麻雀は結果ではなく所作や清潔感を見られている。と。
それを感じたのは両手の指先を見られているという視線を感じたから。これは多分、爪を見られた。キチンと切ってきたか。そう言う所もポイントなのだろう。
もちろんそこは抜かりない。椎名は爪を切ってきたしヤスリもかけた。プロ意識とはこういう事だと椎名は思っていたから。
必ず受かる!受かりたい!椎名はこの試験が興味深くあればあるほど合格したい気持ちが溢れてきたし、あと単純にヤシロさんがあんまり美人なのでカッコいい所を見せたいと思って平静を装ってたのもあった。
椎名は女好きの格好付けな所がありそれは欠点でもあったが今回はそのおかげで上手くいっていた。
(よーし、次こそヤシロさんに良いところ見せちゃうぞ!)
そのくだらない動機は椎名に不屈の麻雀を打たせるのだった。
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