第5話◉実技

5話

◉実技


やしろ。一旦closedにして鍵を閉めて来てくれ。お父さんは卓をセットするから」

「はーい」


 お嬢さんの名前は「ヤシロ」というらしい。おとなしめの日本顔をした美人のお嬢さんにぴったりな名前だなと思った。


部屋の隅に置いてあった麻雀卓を中央に移動させる。


「よっ、とと、重いな」

「手伝います」

「ありがとう、じゃあ『せーの』で持ち上げるよ」

「分かりました」

「はい、せーの!」


 重たいが男2人で持てばなんてことなかった。卓を部屋の中央に移動させてコンセントを差し込み、椅子とサイドテーブルを準備した。


 起動スイッチをオンにする。


ガラガラガラガラ


 中でターンテーブルが回る。準備はOKだ。


「では今から実技面接を始めます。ルールはごく普通のルールでピンの1-3」

「え、レート乗せるんですか」

「まずいか?今日は手持ちが少ないとか?」

「いえ、今日からでも働けるようにしっかり持ってきました。大丈夫です。それより面子は?」

「そこにいるだろう」

 気付いたらもうマスターとヤシロさんは椅子に座って待っていた。


「2人とも凄腕だから本気で勝ちに行かないと痛い目みるから。それだけは忠告しておく。本気を出した上での所作を見させてもらうよ」


「なるほど、面白い面接もあったものですね」

 おれはそう言うと場決め用の牌を引いた。


(北か)


「基本的に半荘一回勝負。早く終わった時だけ二回やる。それでいいね」


「かまいません」


 すると少し固くなっていたおれを気にしてかヤシロさんが飲み物を持ってくるといっておれにウーロン茶をいれて渡してくれた。


「はい、どうぞ。面接補佐を担当させてもらってる福島社ふくしまやしろです。よろしくね」


椎名良祐しいなりょうすけです。まさか、昔からたまに来てたこの店にこんな一面があったなんて思ってもなかったです。びっくりした」


「別の所で面接する時もあるんですけどね、ここだと雀荘に連れて行かないでも所作までチェックできるから」


「なによりアイスコーヒーが美味いしな」


「美人のウェイトレスがいるからとかは言ってくれないのかしら」


「ヤシロは子供の頃から見てるからな。美人かもしれないけど子供にしか思えない」


「もう!私はもう大人なのよ」



「振りますよ」

 マスターがそう言いサイコロボタンを押した。


「よろしくおねがいします!」


 実技面接開始


 

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