第148話紀子は圭太に迫る 河合家の考えが決まる。
圭太が河合家にいた時間は、約40分。(食事は、普通に食べた)
「突然来てしまって、夕食までいただき、ありがとうございました」
紀子の父は、圭太との会話が気に入った。
「なかなか、監査も面白そうだ」
「また、お出でください」
紀子の母は、また圭太の手を握る。
「紀子も気が利かない娘ですが、よろしくね」
圭太は、笑って首を横に振る。
「銀座監査法人では大先輩で、教育される立場なので」
最寄りの駅まで、紀子が送った。
紀子は、圭太の手をためらわずに握る。
「美味しかった?」
圭太は、苦笑い。
「夜は食べる習慣が無くて、必死だった」
紀子は、その意味がわからない。
「夜に食べないの?」
圭太は、紀子には隠さない。
「エネルギーゼリーが主食、母さんが入院してから約8か月」
「まだ在庫が2か月分、それが終わったら食事を考える予定」
紀子は圭太に肩をぶつけた。
「それ、芳香ちゃんは知っているの?」
圭太
「言ったことは・・・あるような、ないような」
「気がついているかも」
紀子は、圭太の肉の落ちた顏を見る。
「よく身体壊さなかった」
圭太は苦笑い。
「壊している余裕がなかった」
紀子
「お世話したいくらい、それを聞くと」
圭太は、やわらかく拒否。
「いいよ、そんなの」
「一人暮らしが、気楽」
紀子は、ムッとした。
「芳香ちゃんはいいのに、私はダメってこと?」
圭太は、ここで事実を列挙。
「芳香さんは、家も近い」
「母さんとなぜか仲良しで、料理を習ったとか」
「と言っても、下町の料理、洒落たものはない」
紀子は、圭太の袖を掴んだ。
「それ・・・嫌」
「私も圭太の家に行きたい」
「今からでも、いい」
圭太は、呆れた。
「おい、明日も監査業務」
「監査人が生活を乱してどうする?」
しかし、紀子は引かない。
「お世話されるのが嫌なの?」
「私を嫌いなの?」
「はっきり言って!」
「それが嫌なら、私の家に泊って!」
(要するに、芳香への嫉妬と自覚しているが、おさまらない)
圭太に紀子が迫っている時間、紀子の父淳司と母公代は、話をしていた。
淳司
「圭太君には、かなり気を使わせて、申し訳なかったな」
公代
「圭太君は、紀子の性格を知っているから、家まで来て頭を下げたと思うの」
「こっちに来なければ、紀子が圭太君の家に押しかけたはず」
淳司
「俺は、圭太君なら紀子を任せたい、考えに深みがあっていい男だ」
「かなり勉強も苦労もして来ている」
「最近は軽口を言って中身の無い弱い男ばかりだけれど、圭太君は強い、別格」
公代
「ただ・・・まだ律子さんのショックが消えていないと思うの、一人きりが辛いと思うよ」
「圭太君なら、紀子を何とかしてくれるは、任せられるのも、わかる」
「でも紀子も我がままで、癒せるのかな、役不足かもしれない」
「紀子は苦労知らずで育って来ているから」
淳司
「でも、紀子がその気で、俺もお前もその気」
「圭太君に任せよう、俺は決めた」
「圭太君なら間違いない」
公代は、笑ってしまった。
(こうなると淳司の気持ちは、梃子でも動かないことを知っているから)
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