第47話圭太と監査士たち 佐藤由紀は蚊帳の外に
翌朝、圭太は出勤直後、専務高橋美津子に呼ばれた。
専務室に入ると、そのままソファに座らされ、話が始まった。
高橋美津子
「噂通りのキレのある働きで、感心しています」
圭太は慎重に返事。
「まだ、慣れていないので、先輩方を見習いながらの仕事です」
高橋美津子は苦笑。
「池田聡君が、残念がってねえ・・・」
「でも、こんな大型新人は返せないって、答えました」
圭太は、池田商事への関心が薄れている。
「戻る気はありません」
「戻りたくもないので」
高橋美津子
「今は、日々の締めも合わないみたい」
「ミスが多過ぎるって嘆いていて」
圭太は関心を示さない。
無表情のまま、話題を変えた。
「佐藤由紀さんですが」
高橋美津子は圭太の気持ちが読めない。
「由紀さんが何か?今は圭太君のサポートをお願いしていますが」
圭太は、頭を下げた。
「あの・・・できれば、サポート役は、佐藤由紀さんとは別の人にお願いしたくて」
高橋美津子
「何かトラブルでもあったの?」
圭太は言葉を選んだ。
「親しく接していただいております」
「でも、もっと厳しい人がいいかな、と」
高橋美津子は、また苦笑。
「由紀さんは、圭太君に接近したいのに?」
「しかたないなあ・・・でも圭太君のレベルは由紀さんを越えたかな」
高橋美津子の決断も速かった。
「わかった、チーフの久保田君と組んでもらいます」
「実は、久保田君からも、言われていました」
「他の監査士も、圭太君と組みたがっています」
その話がチーフの久保田義人に伝達され、圭太の席も移動(久保田義人の隣)になった。
圭太は深く頭を下げる。
「新米ですが、よろしくご教授を」
久保田義人は、満面の笑顔。
「いや・・・助かる、それが本音」
「我々監査士も実務を知らないから、実務も監査もバリバリの圭太君の視点と指摘が、すごく参考になる」
「それにしても、警備のビデオで監査のアイディアはなかった」
「まさかの事実が、確かに明らかになる」
他の監査士も寄って来た。
「一回でも、あの手法を使えば、その後は内部けん制も厳しくなる」
「不正もしづらくなる、あれは有効」
また別の監査士も、久保田と圭太の前に。
「帳簿在庫と現物在庫の確認は、今まで相手企業を信頼するあまり、軽視してしまった」
「でも、監査の基本だよね、これからは無通告でやる、それを徹底しよう」
その他、様々な話題で盛り上がるけれど、佐藤由紀は「蚊帳の外」になっている。
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