第百三十九話ベータ 激突 ベルータス編

 冗談じゃねえぞ。ここまで来て血みどろのオロソーが死んだだと? 

 ふざけやがって。どうなってやがるんだ一体。

 あのビノータスのくそボケは何してやがる。絶空を盗まれたってのか? 

 理解できねぇ。


「ああ、いらつくぜ。おい酒持ってこい!」


 ビシビシと持っているグラスを握りしめて砕くベルータス。

 震えながら酒を持ってくる侍女を再度スターベルから放り投げる。


 ここまで出てきた以上先に進むしかねぇ。

 人質も取ってある。このままオメオメと逃げ帰ったらもう四皇は名乗れねぇ。


「ぶち殺しに行くだけだ。進むぞリベドラ」

「はっ」



 しばらくスターベルが前進すると、眼前に憎き敵が見える。


「どうなってやがる! 奇襲のはずだぜ! なぜ奴が身構えてやがる!」

「やはりベレッタで何かあったのかと思われます」

「あるわけねえだろ! とらえた奴は半殺しで妖力もねえガキ二人だけだ。

逃げれるはずもねえ。ましてやベレッタまで行く術もねぇだろう。

マッハ村のゴミトカゲどもは臆病で近づきもしねぇ」

「別の侵入者……例えばベルローゼなどは?」

「あいつがベレッタの中で暴れたらそれこそ騒ぎだ。すぐ知らせがくるだろうが!」

「確かに……どうしますかベルータス様」

「もう攻撃してくるだろうが! 配置につけ! 常苦のクルエダ。流毒のラプスは

出陣しろ! 邪剣に喰われるんじゃねえぞ! 蛇女に力を与えるだけだ!」


 くそが。

 奇襲じゃねえとあの蛇女に有利すぎる。

 残虐に目の前の映像で成すすべなく殺される捕虜を見せつけてやろうとしたの

が仇になったか。これなら連れてくるんだったぜ! 


「おい、念通をフェルドナージュに通せ! 交渉があると伝えろ!」

「それが先ほどから試みているのですが、繋がりません! 断たれているようです!」

「どういうことだ! 聞く耳もたねえってことか!?」

「気を付けてください! 邪剣以外にも無数の蛇がいます! 

捕まった者が拘束され地面に次々と落とされていきます!」

「なんだと!? あれは別の神話級アーティファクトじゃねえのか!? 情報にねえぞ!? 

こんな短期間に入手しやがったってのか!?」

「わかりません! 邪剣より遥かに回避し辛いようです。ラプス様の毒も効きません!」

「てことは生物じゃねえな。ラプスの毒は全ての生物に効く。おいリベドラ! てめぇも

出陣してラプスの援護に回れ!」

「はっ! ただちに!」


 くそが。残虐霊共だけじゃあいつの邪剣相手で精一杯だ。

 直接嬲り殺してぇが、我慢だ。

 リベドラを前に出しゃ相手にできるのはベルローゼくらいのもんだろ。

 引きずりだしてまずは奴から血祭だ。


 ――リベドラが飛び出してまもなく。

 大爆発とともにリベドラが飛散する。

 すぐ近くにいたラプスを巻き込んで。


「な……何が起こりやがった。あのリベドラが爆死だと? ありえねぇ」


 ベルータスが怒りに震えているその時だった。


「やべぇ! 怨霊防壁!」


 巨大蛇剣にスターベルが貫かれる。

 どうなってやがる。ベルローゼを引きずり出すつもりが……くそが! 

 

「絶対怨霊身代壁!」


 黒星の鎌が飛び交い、スターベルを襲う。それと重なるように巨大蛇剣がスターベル

を突き刺す。


「大変です! 敵右翼後方に新たな部隊。あれはフェルドナーガの

精鋭です!」

「ふざけろよ!? なんでフェルドナーガが出てきやがる。ありえねぇ。

あのイカレ野郎の相手はしたくねえ! 撤退だ!」


 後退し始めてすぐだった。


「ピュトンまで持ってきているとはな……しくったぜ、この残虐のベルータスとも

あろうものが。防戦一方とはな」


 灰色のほとばしるエネルギーを後方からもろに受けるスターベル。


「仕方ねぇ。乗組員全員死ね」

「えっ」


 そう言うとベルータスはスターベルを解除した。

 飛べない者以外は全員落下。

 その残虐さこそベルータスの力の根源。

 残虐な行為をすればするほど、彼の妖魔としての力が高まる。


「怨霊爆散」


 ベルータスを中心に大きな爆発が、巨大邪剣の灰色エネルギー爆発と重なり辺り

一面を吹き飛ばした。


「覚えてろよフェルドナージュ。この借りは必ず返してやる」


 そう言い残し、ベルータスは姿をかき消した。

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